つい最近のこと、天下の大企業アマゾンがカナダ・ケベック州にある全ての倉庫を閉鎖するとの報道があった。アマゾン側は認めていないものの、どうやらカナダ国内で唯一労働組合が結成されたケベック州で従業員を雇用するのが面倒になった、ということなのらしい。
この報道に対して、「ヤフコメ」なんかに目を通してみると、元々アマゾンという企業に対して悪いイメージを持つ人達が否定的な意見を書き込み、それに同意する人の割合が多いように見えた。
労働組合を組織し、よりよい労働環境や待遇を求めるために声を上げるのは従業員の権利。企業が社会や従業員に貢献や還元をする為の決定をする上でも良い影響を与え得るとは思う。だから「ヤフコメ」にあった意見も、それが理性を持って述べられている以上は私にも当然理解できた。

だけどね、と私は思う。
だって、真面目に、丁寧に、一生懸命に働いている人ってそんなに居ないじゃん。
私とてカナダの全てを知っているとは言わないけれど、少なくともこの国に住んでそろそろ9年になる。どこかの誰かが「ヤフコメ」でどれだけ正論を展開しようと、その大半はあくまで日本での常識を根拠にするものであって、カナダの実情が如何なるものであるのかを理解して発した言葉ではない。だからカナダで暮らす私の心にはまるで響かない。

雇用主と従業員の関係が対等であっていいし、そうあるべき。別に人々が個人主義であってもいい。
だけど、職場でも単に不真面目で、大雑把だし、その上怠けてばかりじゃん。
そうやって同僚にも、顧客にも散々迷惑を掛けまくる、言葉は悪いが「給料泥棒」がうじゃうじゃ居るのに、そんな輩が更に徒党を組んで労働組合などを作られた時には、雇用主からしたら解雇すべき従業員を解雇できず、下手したら裁判沙汰にもなって、カネも時間も労力も無駄にする結果を生み出しかねない。
そんなのあまりに理不尽で、且つ超面倒だと、雇用主ではない私ですらそう強く思う。

去年の暮れなど、カナダポスト(カナダ郵便)が11月15日から12月17日にかけて、なんと31日間にも渡ってストライキを実施した。ここ数年のインフレにもかかわらず長く給料据え置きの状態が続いていたからだとか(って言うか、同じ期間中他の仕事をしている人達の給料が上がったのだろうか?)、またはリストラを阻止する為なのだとか。
そのストライキに対してもこれまた権利だ何だと、聞き耳のいいことを言う人は決して少なくない。しかし私は思う。
カナダポストって普段からとんでもない仕事してくれてるじゃん。
ちょっとでもサイズの大きな小包は初めから郵便局留め。それでもちゃんと届けばまだいい。実際には平気で無くす。普通の手紙にしても、つい最近別の住所宛てのものが2日連続で我が家のポストに入っていた。

システムがアップデートされていないから誤送や遅延が発生する?いやいや、ロボットじゃあるまいし、システムだけに頼ってできる仕事なんてあり得ない。人の「意識」はシステムと同じように大切なはず。結局のところ真面目に仕事する気が無いからイレギュラーもそれだけ起きる。
一体カナダ全土で毎日どれだけの数の「人災」を巻き起こしているのか。
彼等にはその自覚があるのだろうかと疑いたくなる。
これまでも幾度となく散々な目に遭わされて来ているものだから、こちらから手紙やカードを送る必要がある時、私は地の利を生かしてデトロイトの中央郵便局で投函する。まだUSPS(アメリカ郵便)の方がマシだろうと考えるからだ。

そんな状況だから、アマゾンがケベック州での業務から撤退し、地元企業に配送サービスを委託する形式にするとの報道が流れても、企業側が最終的にそのような決定を下したことに、従業員達にもその原因は少なからずあるものと私は考えるし、「まあ仕方無いのでは」というのが正直な感想。
この国のどこかには真面目で勤勉な従業員に溢れ、まともに機能している労働組合のある企業が存在していることを願うが、実際それも期待薄だろう。残念ではあるが、私のカナダ社会に対する見方などそんなものなのだ。