カナダでも多くの金融機関から無数に発行されているクレジットカード。日本同様、中には旅行時の特典が手厚いと謳っているものがあり、そのようなカードには旅行保険が付帯しているのが一般的だ。
ところが付帯している保険の種類は様々で、これを出発前に把握しておかないと痛い目に遭ってしまうかも知れない。
Emergency Medical Insurance(治療費用補償保険)
これは「海外旅行保険」と言われて人々が連想するタイプのもので、つまり旅行中に病気になったり、怪我を負ったりした時の治療費や入院費用をカバーしてくれる保険になる(カナダでこのタイプの保険が補償するのは国外だけではなく、国内他州に於いて発生した費用も含まれる)。
だからこそ、「旅行保険付帯と謳っておきながら、治療費も入院費もカバーしてくれないクレジットカードがあるの?」との疑問が自然と湧き上がって来るのだが、それが実はあると言うのだから恐ろしい。
どういう訳か、
カナダでは「旅行保険付帯」という文言があっても、Emergency Medical Insurance まで付いているのはランクが高めのクレジットカードに限られている場合が多い。
RBC や TD Bank といった銀行で発行されるカードを見てもプラチナカードにすら付いておらず、更に上のランクである「インフィニット (Visa Infinite:ビザカードの場合) 」や「ワールドエリート (World Elite Mastercard:マスターカードの場合) 」で初めて付帯され、その分カードの申請条件が厳しくなるだけでなく、相応の年会費がかかるのは言うまでもない。
ただ、後述するその他の付帯保険は基本的にクレジットカードを使って旅費を支払った場合にのみ適用されるところ、こちらの Emergency Medical Insurance についてはそのような条件が設定されていない為、マイルやポイントで交換した航空券やホテルを利用する旅の最中であっても適用されるのは大きなメリット。
Travel Accident Insurance(傷害死亡/後遺障害補償保険)
この「トラベルアクシデント」が非常に紛らわしいのだが、前述の Emergency Medical Insurance が万一の治療を要した際の補償に使われるのに対し、Travel Accident Insurance は旅先での事故など外的要因が作用した結果での死亡や後遺障害に予め決められた額が支払われるもので、治療過程に発生する各費用の補償を目的とした保険ではない。
つまり、怪我や病気で死んでしまうか、或いは後遺障害でも残らない限り、ビタ一文払いませんよという保険であり(いささか言葉は悪いが)、あって困ることは無くても、最も必要な時に助けてくれるものではないのも確かだ。
その他の「利用付帯」保険
利用付帯保険というのは、つまり費用(全額)の支払にカードを使ったことを条件に付帯される保険のこと。
1. Auto Rental Collision / Loss Damage Insurance(レンタカー保険)
日本発行のクレジットカードに付帯する保険同様、この種の所謂「レンタカー保険」はあくまでも借りた車にダメージが生じたり、或いは盗難に遭ったようなケースに使われるものに過ぎず、第三者への賠償(対人対物損害賠償)を補償する内容は含まれていない。
ちなみにカナダでレンタカーを借りる場合は、対人対物損害賠償保険は必ずレンタカー料金に含まれているものの、補償額は各州やレンタカー会社で違いがあるので事前の確認が必須。
2. Trip Cancellation / Trip Interruption Insurance(旅行キャンセル・変更費用補償保険)
何らかの正当な理由で旅行を延期したり、或いは中止せざるを得なくなった場合や、旅行中に新たに発生した原因により滞在を短縮もしくは延長しなければいけなくなった場合の損失を補うと言うのがこちらの保険。
ところが、最高補償額は1人につき1500ドル程度に過ぎないばかりか、この保険自体が比較的ランクの高いカードでのみ付帯されていることもあり、それを使えるとするのか、それともそうでないのかは、判断が難しいところではある。
3. その他
その他「旅行保険」としてカードの利用を条件に付帯されるものには、飛行機の遅延に起因する損失を補償する Trip Delay Insurance や、ロストバゲッジを補償する Lost Baggage Insurance などがある。ただ、これらにもカードのランクによって付帯されたりされなかったり、またそれぞれに異なる補償額が設定されていたりの違いがある。
結論:カナダで発行されたクレジットカード付帯の旅行保険の使い勝手は微妙
以上のとおり、「旅行保険」が付帯されると言ってもその内容はカードによって差があり、付帯される場合であっても補償額が微妙?と感じさせられるようなものも存在している。
特に、旅先で病院での治療を迫られるような事態に遭遇してしまった時に、使えると思っていた保険が実は無かったのではまさに泣きっ面に蜂としか言いようが無い。それならばクレジットカードは、年会費無料であったり、もしくは買い物でポイントが貯まるような、他によりメリットがあるものを選び、保険については出発前に別途加入した方がいいかも知れない。