女王陛下逝去がカナダの市民権授与式に与えた影響

カナダの市民権授与式では参加者全員が国家元首たる女王陛下に対し忠誠を約束する誓いを立てることが必須、だった。

イギリスのエリザベス女王が亡くなられたとのニュースが世界を駆け巡ったのはつい3日前の事。

イギリス人でなく、イギリスに住んだことすら無い私にとって、不謹慎だと言われようと、それはただのニュースの一つに過ぎず、特別な感情などはある訳も無かった。

しかし、数日後にはカナダの市民権を正式に取得しようとしている時、感情云々は二の次にしても、授与式で発する誓いの言葉を練習しておかなければならないのは事実で、私の場合、その言葉はエリザベス女王に対して忠誠を誓うという内容であるはずだった。

女王陛下が逝去された以上、私が忠誠を誓う相手はもうその人ではない。そして新たな相手はと言えば、当然ながら国王に即位されたあの「チャールズ皇太子」である。

ニュースで彼とダイアナ元妃のいざこざについて見て来た者として心境はいささか複雑、などと言ったら不敬罪で縛られてしまうのだろうか。ただ、「特別な感情が無い」だけで済んだエリザベス2世ならまだしも、チャールズ3世にどう忠誠を誓えばいいのか私にはちょっと分からない、かも知れない。

日本に帰化する人だって、まさか天皇陛下に忠誠を誓うように求められる訳ではあるまいし。一体いつの時代の話かと思ってしまう。

それはさておき、相変わらずすごいと感心したのがウィキペディアで、市民権授与式に於ける誓いの言葉の内容が女王陛下逝去当日に更新されていた。「チャールズ皇太子」が実はチャールズ3世であるというのも、実は私もこの内容を見て初めて知ったのだった。

Oath of Citizenship (Canada) – Wikipedia

そして、こちらも相変わらずなのがカナダ政府のウェブサイト。あの日から3日が経過した今になっても誓いの言葉は更新されないままだ(その後更新された)。

ところで、昭和生まれの私はその後も平成、令和と、計3つの年号を冠する時代を生きて来ているが、今でも誰かが平成生まれなどと聞けば反射的に「若い人だな」と思ってしまうし、令和に至ってはその時代を日本で過ごした経験も無い故に全く親しみが湧かず、つくづく昭和の人間なのだと自覚してしまう。

対してカナダの人々は、「私はエリザベス世代だ」だとか、これから生まれて来る子達が将来「私はチャールズ世代だから」などと言うようなことは無いのではないかと思う。英連邦に属するカナダでは、これまでエリザベス女王を「クイーンオブカナダ」と称して来たし、20ドル紙幣にも女王の肖像が描かれている。だからと言って人々がそこまでの繋がりを感じているかと言えばそのようには見えない。

果たしてそんな彼等が女王に忠誠を誓う場面など経験したことはあるのだろうか?もし無いのであれば、どうして新たにカナダ人となる私のような者にはそれを求めるのかと不思議にもなる。まあ別にいいけれど。

と言うことで、チャールズ新国王に忠誠を誓う心の準備をするまで、私に残された時間はあと3日だ。

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