ワクチン接種が進むカナダの現状 「日常」は戻って来るのか?

ワクチン接種が進むカナダの現状 「日常」は戻って来るのか?

アメリカが着々とワクチン接種計画を進行させているのを傍目に、「カナダではいつになったらワクチンを打てるようになるのだろう?」と思わずにいられなかったのはそれ程前の話ではない。

カナダも日本同様、高齢者や医療従事者、既往症のある人等から接種が始まったし、そういった人達を含めても、アメリカやヨーロッパ諸国と比べれば接種プログラム自体を進めるのに結構時間を要していた感があるのは否めない。だから自分に回って来るのなどはまだ当分先だと思っていた。

一気にスピードアップしたカナダのワクチン接種計画

ところが、それまで特に若年層に対する安全性が懸念されていたアストラゼネカワクチン (AstraZeneca) の接種対象が40歳以上の住民にまで拡大された事により、私自身も4月(20日)に1回目の接種を受ける機会に恵まれた。更に半月程が過ぎた頃にはファイザー (Pfizer/BioNTech)、モデルナ (Moderna) のワクチンも供給量が一気に増加して、当地アルバータ州の場合、12歳以上の住民なら誰でも1回目の接種が受けられるようになっている。

結果、当初は大きく遅れを取っていたはずのこの国が、少なくとも1度の接種を受けた人の占める割合で瞬く間に隣国を追い越した。カナダ政府の統計によると、地域ごとに多少の差はあれど、今(2021年5月29日現在)ではワクチン接種対象外の人も含む総人口の約57%、18歳以上に限定すると約68%がファイザー、モデルナ、若しくはアストラゼネカのいずれかのワクチンを1度は打っているのだそうだ。

credit: Government of Canada

2回目の接種も既に段階的に始まっている

2度のワクチン接種で推奨される間隔は世界各国で定義が異なっている状況で、元々ワクチンの供給量が不足していたカナダに於いては、できるだけ多くの人が最低1度の接種を受ける事を重視している事もあって、接種の間隔も医学的に許容される範囲内で引き伸ばす政策を採って来た。

それがここに来て一定量のワクチンを確保する事が可能になり、当初推奨された間隔より幾らか前倒しする形で2度目の接種を受けられるようになっている。アルバータ州では、3月までに1度目の接種を受けた人の場合、今月1日から2度目の接種の予約受付が開始され、私のように4月に接種を受けた場合でも今月14日には予約が可能になる(その後10日からに前倒し)。

2度目の接種にどのワクチンを選ぶか

カナダで現時点に於いて実際に使用されているコロナワクチンは計3種。ファイザー、モデルナ、そして私も1度目にその接種を受けたアストラゼネカだ。もう1種カナダで既に認可を受けていながらまだ使用が開始されていないジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンが1回の接種で済むのに対して、前述したいずれのワクチンも2度接種する事が必要とされる。

2度目について、本来は1度目と同じ種類のワクチンの接種を受けるのが原則とされていたのだが、ヨーロッパ(イギリスとスペイン)での研究結果を受けて、カナダでも最近になって新たに方針が変更された。1度目がファイザーのワクチンだった場合、2度目にモデルナの接種を受けてもよく(その逆も然り)、1度目にアストラゼネカワクチンの接種を受けた場合、2度目にはアストラゼネカだけでなく、ファイザー若しくはモデルナを打ってもいい事になった。

つまり、1度目にアストラゼネカワクチンを打っている私は、間も無く訪れる2度目の機会には3種の中から自分で希望するワクチンを選べるという訳だ。

「ワクチンの選択=リスクの選択」でもある

まだまだワクチン接種が進んでいない日本から見たならば、カナダでのワクチンがよりどりみどりで、且つ自由に選択できる状況は贅沢にさえ感じられるのかも知れないし、私自身有難く感じてもいる。

そうとは言え、それだけの選択肢があり、各個人にその選択が任されているというのは、つまり自分で自分の選択に責任を持つ事が求められるという事でもある。それも今回のように非常事態に短期間で開発されたワクチンの場合、その選択が健康にも悪い影響を及ぼしかねない訳で、それぞれのワクチンを接種する事のリスクを充分に理解した上で決断しなくてはならない。

では、1度アストラゼネカのワクチンを接種した私は2度目にも同じアストラゼネカを選ぶのが得策なのだろうか。必ずしもそうとは言い切れない。

ー アストラゼネカ+アストラゼネカのケース

その1つ目の理由が、ファイザーやモデルナと比べて劣ると言われるアストラゼネカワクチンの有効性だ。前者2種の有効性が90%以上に達するとの研究結果が出ているのに対し、後者では60%から80%程度まで下がる。

そして2つ目の理由が現在流行している「デルタ株(インド株)」だ。ワクチンの接種を1回受けただけではこの変異種に対する効力があまり期待できないそうなのだが、アストラゼネカワクチンは2回の接種で間隔を長くとる事(12週間程度)でより効果がある事が分かっている。4月に1回目の接種を受けたばかりの私の場合、

①デルタ株への耐性を上げる為に少しでも早く打つべきのか、

②それともデルタ株への感染のリスクを負ってでも、ワクチン接種によって得られる免疫力を最大限まで高める為に2度目の接種をもう暫く控えるのか、

当然専門知識などあるはずも無く、ただ闇雲に悩む事しかできない。

ー アストラゼネカ+ファイザー(モデルナ)のケース

2回ともアストラゼネカワクチンを打つ場合に12週間の間隔を空けるよう推奨されているのに対し、2回目にファイザー、若しくはモデルナを選ぶ際には、1回目との間に8週間以上ある事だけが求められている(アルバータ州の場合)。これは特に効果云々の理由と言うより、安全性を求めた上での判断らしい。つまり、この場合はより短い間隔で2回目の接種を受ける事による効果の減少を気にする必要は無いとも言える。

それでも異なる種類のワクチンを打つ事に対する安全面での懸念は決して小さなものではない。何しろカナダ政府自身も、このような接種方法に対してはまだデータが少なく、あくまでも検証を進めている段階に過ぎないと明言しているからだ。

ワクチンは社会に平穏をもたらすのか

元々マスク着用に対してすら反対の声があちこちで聞こえたカナダだから、当然ワクチン反対派も少なくない。尚且つ他に私達が知り得るワクチンと比べてもリスクが大きいと言わざるを得ない状況で、社会全体が集団免疫を取得するに至るかどうか、それはワクチン接種が比較的進んでいると言われる他国を見てもまだ分からないのが現実だろう。特に1回の接種だけでは感染を防げないと言われるデルタ株の出現により、どれだけのスピード感でより多くの人が2回の接種を完了できるのかも重要になる。

ワクチン接種に賛成なのか反対なのかは個人の自由だから、この点について意見しようとは思わない。ただ、人々が国や市町村、或いは勤務先の会社、そして周りの人に対して任せきりの態度であったり、流されるままで、この期に及んでも自分がどうするのが最善であるのか、どうするべきなのかについて考える事すら忘れているように見受けられるのは日本もカナダも大して変わらず、これは本当に大きな問題だと感じる。

普段こそ、表面上では社会のルールを守っているような素振りを見せながら、実際には自分本位な思考回路でしか物事を考えられない人がそれこそ「腐る程」存在しているのは、社会にとって決して望ましい事ではない。神様でもない国のトップに、民が皆モンスターカスタマー化して社会の平穏や安寧を求めたら実現してしまうだなんて、そんな子供の教育に悪そうなおとぎ話は誰も聞いた事無いだろう。

各個人のモラルや、社会に対する責任感の格差こそ、コロナ禍の収束に向けて克服しなくてはならない最大の障壁であると私達自身が強く自覚するべきで、その上で人任せにするのではなく、自分にもできる事を率先して粛々と着実にこなす。社会も個人も同様に試されている。