病院通いから始まった(犬の)子育て

去年冬に引き取った1歳の成犬。その後順調に新たな環境に慣れ、すっかり我が家の娘(以下「長女」)になった。もちろん色々と試行錯誤を繰り返しながら、彼女も私もできるだけ心地よく生活できるようにと条件を整えたが故の結果だ。

そして先月、私はもう1匹、まだ生まれて3ヶ月弱という子犬を迎え入れた。長女を引き取ったのと同じシェルターからで、こちらもまた雌犬だから「次女」。多頭飼いには異性同士の方が相性がいいとも聞く。それでも私が今回も雌犬を迎えたのは、単にこれまで雌犬しか飼った事が無いという理由から。

人間の子供を育てた経験のある人であれば、小さな子供を育てるのに必要な労力や忍耐力がどれ程のものであるのかを熟知しているのだと思うけれど、そのような経験の無い私は、犬であれ子供を育てるというのが如何に大変なのかを今まさに思い知っている。

ただかわいいとだけ言っていれば順調に育ってくれる訳ではないのは当たり前で、育てる過程で知っておかなければいけない事、気づかなければいけない事は少なくない。

北米では早期の避妊手術が一般的らしい

カナダのシェルターから犬や猫を引き取る場合、避妊 (spay)・去勢 (neuter) 手術とワクチン接種は済ませてある場合が多い。我が家の次女のケースでは、引き取った時点でまだ生後10週間程度という事もあり、ワクチンについてはまだ2回目の混合ワクチンを打つ必要があったものの、避妊手術は既に済ませてあった。

まだそんなに小さいのに避妊手術?と驚いたのだが、どうやら北米では結構普通に行われているらしく、そうする事のメリットも少なからずあるのだそうだ。ただ、私がまだ連れて帰って来たばかりの子犬の世話をする上で支障を来たした原因もまさにこの手術だった。傷痕が少し開いてしまい、出血こそ無かったものの、何やら膿らしいものが出始めたのだ。

幸いここから遠くないエドモントンには24時間開いている動物病院があり、夜11時過ぎだっただろうか、車を30分程運転して連れて行き診てもらった(24時間開いているとは言え夜間ともなれば全て急患扱いで、お医者さんの数も少なくなっている為に、人間同様トリアージが実施される)。ところが私の心配に反して診断の結果は「安静にしてさえいれば特に問題無し」。その翌日にでも「かかりつけの動物病院に行って抗生物質と鎮静剤を出してもらえば大丈夫」と言われ、そこではエリザベスカラーだけつけてもらいそのまま帰宅した。

動物病院の選択は慎重に

そして翌日。

連れて行ったのは、今年に入ってから「長女」がお世話になり始めた動物病院。元々は私の住む住宅街にある別の病院に行っていたのだが、いまいちな印象があったのと、実際に評判もあまり芳しくないようだった為に、結果行くようになったのがその病院で、こちらもまたエドモントンにある。

まず、以前行っていた病院について何がいまいちだったのかと言うと、医者の人当たりは決して悪くなくても、こちらから聞かないと大した事も教えてくれず、説明もしてもらえなかった点。カナダでは私達人間が病院に行く時であっても同じような事がよくあるのだそう。でも患者は医者ではないから、何か知りたいと思ってもその何かが一体何であるのかすら分からない場合も多ければ、詳しく説明を受ける事で初めて注意しなくてはいけない点に気がつく場合だってある。

実際に今の病院でお世話になってみて、こんなにも違うものなのかと感じている。コロナ禍という事もあって、患者である「次女」しか病院の中には入れないものの、先生が診察をしながら電話を通じて丁寧に説明をしてくれて、初めに行った病院で「安静にしていれば大丈夫」と言われても「大丈夫」の根拠がどこにあるのか分からずにいたのが、こちらの病院ではそれを聞かずとも先生がきちんと説明してくれた。その上で飼い主である私がどう面倒を見てあげればいいのかについてのアドバイスも頂けた為に、より安心して自分がやるべき事をできるし、更なる気づきを自らに促すだけの精神的余裕も生まれた。

ちなみにこの際に言われたのは、避妊手術の傷は表面の皮膚から3層になっていて、今回の次女の場合開いてしまったのは最も外側の部分だけであり、だから「大丈夫」という事だったらしい。最後に鎮静剤を1週間分と、抗生物質を10日間分出してもらい、結果傷口は無事にきれいに閉じてくれた。

ワクチン接種のスケジュール管理は飼い主の責務

ワクチン接種と聞けば今は瞬時にコロナと結びつけてしまいそうになるが、犬にも必ず打っておくべきワクチンがある。

それにも拘らず、特に狂犬病のような人畜共通の感染症で、感染すればほぼ確実に死に至る病気を防ぐ為のワクチンであっても、地域によっては必ずしも法律でその接種が義務化されていないだけでなく、例え義務化されていても日本のように各地方自治体から毎年決められた時期に通知が届く訳でもないのがカナダ。そんな事で本当に大丈夫なのかどうかは別にして、ワクチンを打つのが犬にも人間にも必要不可欠である以上、飼い主は当然その責任を果たさなければいけない。

我が家の次女の場合、1回目のワクチン接種はシェルターで済ませてあったので(シェルター内で接種したのでは無く、あくまでシェルター側が病院に連れて行き接種を済ませた)、2回目以降のワクチンを飼い主である私の責任で接種に連れて行く必要があった。通知すら無いカナダだから日本のように集団予防接種会場が設置される訳も無く、動物病院がワクチンの接種を受けられる唯一の場所になる。2回目のワクチンは生後10~12週での接種となっていて、10週の時に引き取って来た我が子については開いてしまった手術痕の加療に時間を要したせいで、ぎりぎり12週の時にワクチンの接種を受ける事ができた。

こちらは次女が生後16週までに受けたワクチンの実例。

  • 1回目(生後6~8週):混合ワクチン(犬ジステンパー、アデノウイルス1型・2型、パルボウイルス、パラインフルエンザ)。
  • 2回目(生後10~12週:混合ワクチン、ボルデテラ。
  • 3回目(生後14~16週):混合ワクチン、狂犬病。

狂犬病だろうが、その他のワクチンや薬であろうが、行政からは何の連絡ももらえないカナダながら、特にワクチンの接種後動物病院から出される接種証明に目を通すと、次回いつ接種しなければならないのかが明記されている事がある。その時が来るとメールや電話、若しくはアプリで連絡をくれるような病院も当然あるものの、人の命も犬の命も自分で守る態勢を整えておくのが大切で、最も「間違い」が無いこの場所では、スマートフォンのカレンダー機能等を駆使してスケジュール管理をしておくのが賢明と言えるだろう。