カナダで動物保護施設による犬の無料譲渡に感じた違和感

無料がいつでも善ではない。里親は引き取り手数料として500ドル支払うのを厭わないのか。それとも無料だから引き取ることを決めるのか。もしその差で不幸になる犬が居るのだとしたらあまりに悲しい。

つい最近、地元オンタリオ州ウィンザーのニュースサイトに上がった記事に、当地のシェルター(動物保護施設)が無料で犬を提供しているとの内容があった。日本語で表現する上で「提供」などという言葉を使うとどうしても違和感を呼び起こすものだが、それは今回のシェルターによる決定に私が抱いた違和感そのものから来ている。

何故かと言えば、過去30日の間に引き取り主が見つかっていない、4歳以上で、且つ体重が100lb(約45kg)を超える犬であるという条件が設定されていたからだ。

カナダで新しく犬や猫を飼うとなった場合、シェルターから保護犬や保護猫を引き取るのはごく一般的な選択肢の1つであり、我が家の娘2匹のいずれもアルバータ州にあるシェルターからやって来た。

こうしたシェルターから動物を引き取る際には、引き取りを希望する者が詳細に渡る質問票に回答することにより、それぞれに定められた基準(飼育条件)を満たしていることを確認されるケースが多く、その上で一定の費用を支払うことで引き取りプロセスが完了する仕組みになっている。

それにもかかわらず、今回ウィンザーのシェルターは無料で大型犬を差し出そうと言うのだから、当然ながらそこには理由が存在している。つまり、シェルターが既に満杯であるだけでなく、幼犬ならすぐにでも里親が見つかるところ、中年期に入った大型犬ともなればそうそう見向きもされないということだ。

確かに、里親が犬や猫を引き取る際に支払う費用はシェルターにとって重要な運営資金源であるし、保護されるのを待っている動物はまだ幾らでも居るのも事実なのだろう。保護してから里親を見つけ出すまでの時間を短縮できればできるほど、シェルターの資金はより潤うだけでなく、また次に待つ動物を収容するスペースだって確保できる。

しかし大型犬を世話するというのはお金がかかるものだ。だからこそシェルターも今回そのような条件を設定して「提供」することを決めたのだろうが、新たな飼い主が見つかったとして、本当に飼い主はその犬を最後まで世話してあげられるだけの覚悟と経済力を持ち合わせているのか。かわいいから、かわいそうだからと言いつつ、実際はただ無料であることばかりに魅かれて、安易に引き取ることを決めてしまう人が居るのではないだろうか。

私の家族になった2匹はいずれも25kg強で、カナダでは大型犬とまではいかず、中型犬の範疇に含まれるサイズに過ぎない。それでも毎月の食費代だけで250カナダドル(現行のレートで27000円弱)はかかっているし、ペット保険も80カナダドル(同8500円強)はしている。

これはあくまで最低限の出費で、ワクチンの接種やフィラリアの薬代はもちろん、それ以外に獣医に診てもらわなくてはいけなくなった場合など、別途発生する費用もバカにならない。いずれにしても日本より高くつくことは間違い無い。

無料で里親になれるからと、45kgを超える大型犬を引き取って来たはいいものの、食欲旺盛な犬を育てるのに毎月どれ程の出費になるのか、そしてその犬が必要とする運動量を満足させてあげられるだけの時間的余裕があるのか。計画性も想像力も不足している人が残念なことに決して少なくないのはきっとシェルターだって分かっている。

条件を設定し、引取り手数料を無料にすれば、確かに宣伝効果はアップし、より多くの人の注目を集めるのは間違い無く、それがきっかけで無料有料を問わず、里親になることを考える人も居るかも知れない。ところが、単に「どうせ無料だから」という理由で引き取られた犬や猫が居るのだとしたらあまりに不幸だ。人の浅はかさや身勝手さこそが、どんなに引き取られて行ってもまだ次から次へと新しく保護されて来る動物が居るという現状を生み出す要因の一つである以上、やはり「無料」の二文字は諸刃の剣とも言える。

コロナ禍真っ只中の時などは、犬や猫を見にシェルターを訪ねたくても予約すら取れず、譲渡会は朝一番から並んでどうにか整理券を入手するような「大盛況」で、それが各地でニュースにもなるほどだったはず。それが今はまたどこのシェルターも動物で溢れ返り、里親探しに苦労する状況に逆戻りしてしまっているのだから、カナダのペット事情が他のどこかの国と比べて優れているなどとは誰にも言えないのが事実だ。

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