とにかくただ走るだけだったカナダ横断5日間の旅を改めて振り返る

とにかくただ走るだけだったカナダ横断5日間の旅を改めて振り返る

大西洋沿岸にあるニューブランズウィック州から独り車を走らせ、5日間もの時間を掛けて西部アルバータ州に引越して来たのは2年前の事(2018年12月)。過去1年弱の間をコロナ禍の中過ごして来たせいか、特筆するべきものは無いと思っていたあの「旅」ですら、今はどこか思い出深く感じられるようになったのだから不思議なものだ。

カナダの大地を横断すると言えば、それはロマン溢れるようできっと聞こえは悪くない。世界第二位の広大な国土を誇るこの国だ、私だって「きっと生涯忘れ得ぬ美しい風景に遭遇する機会が待っている!」と実は結構期待していた。しかし現実はなかなかに残酷だった。

カナダ横断の旅にロマンはあるか

よくよく考えてみれば、「大陸横断=ロマン」というように錯覚するのは、恐らくお隣りアメリカに対するイメージから来るものだ。そこには煌びやかな大都市もあれば、美しい大自然の広がる風景もあり、更に各地で異なる文化や気候条件も相まって見る者を魅了する(のだろう)。

カナダにもその全てがある。ただアメリカとは徹底的に異なる要素がひとつある。それは人口だ。3億を超す人口を擁するアメリカに対して、カナダは大雑把に言えばその10分の1程度。人が少ないから道もまた少ない。人が住んでいない所に道は必要無い。

少しばかり遠回りするのも厭わないなら、アメリカでの大陸横断には幾つものルートから好きなものを選択できる楽しみがある。ところがカナダで大陸横断に使える道など「トランスカナダハイウェイ」一択だし(途中に数本の支線がある)、グーグルマップで調べてみても、アメリカを経由するルートまでもが一緒に提示される始末だ(東海岸のハリファクスから西海岸のバンクーバーまで案内されるルート上、カナダ国内での走行距離はほんの僅か)。私自身はこの時あくまで引越が大陸横断の理由で車にも多くの荷物を積んでいた為、国境越えのリスクを冒してまでアメリカを経由するという選択肢は初めから無かった。

孤独な大陸

期待したような美しい景気を拝めないのは我慢した。運悪く近くを走っていなかっただけだ。そう自分に言い聞かせた。

私が走った時期がよくなかったというのもある。「一択」が珍しく「二択」になるオンタリオ州内で、冬でなければ選んだであろう五大湖沿岸の道。本来風光明媚な所で気持ちよくドライブが楽しめるそうなのだが、冬の間は湖から吹き付ける湿った空気で道が滑りやすくなるらしく、これから新たな土地で新たな生活を迎えようとする時だけあって、私はもう片方の更に辺鄙な場所を走るルートを選んだのだった。

それでも「トランスカナダハイウェイ」だから、その周辺にはある程度人も物も集まっていて欲しかった。実際にはそんな最後の小さな願いすらもが空振りに終わった。道があるのに人は居なかった。道は人の行き来と物流の為に存在していた。だからこそ「一択」時々「二択」でも充分に事足りてしまったようだ。

カナダ横断の旅はファストフードと向き合う旅。こんな笑顔にはそうそうなれない。

そのような道を走り続ける上で苦痛だったのはやっぱり食事。都市部を除けばあるのはファストフード店ぐらいで、それすらもなかなかありつけないような場所をひたすら走っていた。5日間走り、5日間ファストフードを食べ続けた。朝も、昼も、夜も。元々嫌いではない。でもこの時ばかりは嫌いになりそうだった。

ファストフード店が無ければトイレも無い。切羽詰まれば路肩に車を停めて茂みに隠れて、なんて事も考えた。しかしそれも叶わない。何しろ路肩が狭かった。そしてそこには雪が積もり余計に狭くしている。車を停めるなど到底無理だ。時折見かけた脇道だってまずそこに入る車が居ないから当然厚い雪が路面を覆っていた。そんな所に入って行けば今度は抜け出せなくなる。結果トイレは100kmも200kmも先の次の町までお預け。同じ理由でタバコを吸う事もできず、食事、トイレ、タバコと全てを我慢しなくてはいけない三重苦に陥ったのだった。

カナダ横断の旅は結構孤独でしんどかった。2年の時を経て思い返してみても随分頑張ったなと思う。

カナダ横断の旅で学んだ事

そんな旅でも経験して学んだ事は幾つかある。

まず1つ目は、適度に休憩を入れ、1日に走り過ぎないという事。基本的にはずっと北海道の田舎道を走っているような感覚で、走りやすいが故に緊張感が不足しがちになる。同時に体は確実に疲労を溜めていて、8時間も10時間も走った後に大きな町でホテルの予約を入れていたりすると、既に疲れ果てている状態の時に交通量の多い場所での走行を迫られ、まるで北海道からいきなり東京に引き戻されたかのよう。対向車のライトで目が眩むやら、標識が多くてついて行けないやらで、これだけで最後のとどめを刺された感じになる。

そして2つ目に、ガソリンとウォッシャー液にはいつも余裕を。ハイウェイとは言え実際にはただの田舎道。「まだタンクに半分もあるし」なんて余裕かましているときっと後悔する。次のガソリンスタンドがどれだけ先にあるのか調べていたとしても、時期によっては開いていないかも知れない。そしてウォッシャー液。特に降雪時の路面は汚く、跳ね返りを浴びてフロントが相当見づらくなる。その都度使っているとウォッシャー液も想像以上に減り方が激しいので補充が必要になって来る。

3つ目。30分以上走っても携帯の電波が無いなんて当たり前。だから調べ物は前もってする。グーグルマップを使うなら必要に応じてオフラインマップをダウンロードしておく。そして何より安全運転を徹底する。電波を拾えないような場所にこそ多く生息するムースやエルク、熊といった大型の野生動物にぶつかったりしたらとても車の損傷だけでは済まないし、電波が無ければ助けを呼ぶ事もできない。私も一度だけムースに遭遇した事があったが(この大陸横断とはまた別の時に)、もう何か山でも見上げているかのような図体の大きさでそれは驚いた。

この時に私が走ったルートだけに限定して正直に言うと、ただ走りたいが為に走るのでなければ、またはどうしても車で移動しなければいけない理由が無ければ、わざわざ時間とお金を掛けてまで走る程魅力があるようには思わなかった。一人旅だったからという訳ではない。単純にそこまで興味をそそられる景色にも特色にも出会わなかった。次回東海岸方面まで運転して行く用事があったなら、その時こそ私はアメリカを経由して行くだろう。少なくともその方がガソリン代は随分安くつくのだし。

同じ「トランスカナダハイウェイ」を走るのなら、アルバータ州からロッキー山脈を抜けてブリティッシュコロンビア州へと向かうルートの方が、人々がカナダと聞いて思い浮かべるような雄大な自然の眺めを楽しむ事ができるし(私も引越して来てから初めて走った)、他にはニューブランズウィック州からコンフェデレーション・ブリッジを通ってプリンスエドワード島へと続く道も「ハイウェイ」を構成する一区間で、特にプリンスエドワード島内は走っているだけでも充分楽しめる程素敵な景色が広がっている。

プリンスエドワード島

データ

  • 全行程走行距離:4591.1km(青森から鹿児島までを1往復した後、再度青森から横浜まで走る距離に相当)
  • 全行程走行時間:51時間28分
  • 途中通った州(出発地と目的地を含む):ニューブランズウィック、ケベック、オンタリオ、マニトバ、サスカチュワン、アルバータ
  • ファストフードを食べた回数:具体的な回数は覚えていないが期間中全食ファストフード
  • ドライブ中に聴いた曲数:不明(事前に用意した曲をリピートする事10数回)
  • 野生動物に遭遇した回数:0

 

  • 宿泊回数:4泊
  • 宿泊にかかった費用:361.02カナダドル(税込)
  • 給油回数:11回
  • 給油にかかった費用:406.38カナダドル(税込)
  • 有料道路料金:0