肌感覚から語るオンタリオ州ウィンザーの治安

近くこの町に越して来られるという方から、当地での部屋探し事情に関してご質問を受けた。その際、家賃相場、探し方と探しやすさに触れたのはもちろんだが、私が返答中特に気を遣ったのは治安についてだった。

カナダ国内他州からオンタリオ州ウィンザーへと越して来て1年半。カナダに移住するずっと前から海外での生活を20年以上も送って来て、危険に対する「嗅覚」もそれなりに発達していると自負する私が感じているのは、この町の治安が決してよくないということだ。

人口が大して多くもない町(約23万人)でありながら、地元のニュースでは強盗や暴行、果ては発砲事件に至るまで、各種犯罪の報道を頻繁に目にする。普段自らの生活に影響が無い限りは無視してしまいがちな報道ではあるが、こうした犯罪が発生しているのは事実であって、自分も巻き込まれることが無いようにと最低限の警戒心を持ちつつ日々過ごしている。

私が住んでいるのは、ウィンザーのダウンタウンに近く、町を東西に貫く主要道路沿いにある商業エリアの一角。

それと交差する道に入ればすぐ住宅街が広がっているのにもかかわらず、いかにも薬物中毒者といった風体の者が喚き声を上げながらフラフラしていたり、浮浪者が既に潰れた商店の中を窓ガラス越しに覗き見ていたりするのは、このエリアで普通に見られる「日常の風景」に過ぎないし、パトカーがサイレンをけたたましく鳴らしながら猛スピードで走り抜けて行くのだってしょっちゅうだ。

そんな中を、いざ何かが起きても私を守ってくれそうにはない犬を連れて散歩もする。相当危なっかしい人でさえなければこちらから挨拶だってする。犬を飼っていれば散歩に出ない訳にはいかないし、表情を硬くしているよりは笑顔を見せた方が上手くやり過ごせるような気がするから。

阿呆みたいにボケっと歩いたりせず、目だけに頼るのではなく、しっかり耳も使って周囲を観察する習慣が今も役に立っていると感じるのは、それがウィンザーで生活する上で必要不可欠であるという現実が存在しているからに他ならない。

だからと言って、いつも不安や恐怖を感じているのかと聞かれたならば、その答えが「ノー」であることに私は疑いを持たない。少なくとも現時点では。

唯一気がかりなのは、去年の秋に放火に遭い、閉店に追い込まれたレストランが、まさかもまさか、我が家のすぐ隣りの空き店舗を利用して再オープンすること。このお店、放火の前にも何度か泥棒に入られていたそうで、当時ニュースを見て「何かの恨みを買っていたのでは?」とまず疑ってしまったのを覚えている。道端で不審者に遭遇したのなら、少なくとも自分で直感的に判断して対応のしようがあっても、まるで関係しないところで煙が立つのまでは止めようも無い。

同じウィンザーに住んでいても、人によっては「この人一体どの町について書いているのだろう?」と感じる人もきっと居る。それは元々、治安というものが町単位や国単位で語られることが多いのに反して、実際には町の中のエリアごとでまるで異なる様相を見せるからで、治安のいいエリアに暮らしている人がそうでないエリアの状況に疎くなるのは、わざわざそんな場所に足を踏み入れない、もしくはできるだけ踏み入れないように心がけているからだ。

それでも私が変わらずこのエリアに住んでいるのは、単に引越が面倒であり、且つ、いつまでもこの町に住むつもりが無い為だけではなく、そこまで切羽詰まった状況に置かれているとは感じていないことの表れでもある。

これからウィンザーに越して来ようとしている人に私ができるアドバイスがあるとすれば、部屋探しは自分の足で歩き、自分の目で見て、自分の鼻で探るという段階を必ず踏むということ。

特にコロナ禍以降、ネット上で物事を簡単に済ませることも可能になったのは事実。しかし部屋探しに関しては、そうすることで見えるのは部屋の中だけに過ぎず、周辺環境までを窺い知ることはできない。ましてや不誠実な大家や不動産業者が少なくない中、スクリーン上に映った文字や画像だけを頼りに契約まで進めてしまうのはいささか無謀にも過ぎるように感じる。慣れない国や町での生活、それでも最終的に頼れるのは自分だけなのだから。

観光目的で来るのならどうかって?

そう聞かれたなら私は答える。「わざわざウィンザーに来て見るようなものなど無い」と。そのまま走り抜けてトロントなり、シカゴなりに行くのをお勧めする。

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