カナダから一時帰国前のPCR検査はアメリカで格安に済ませた

一時帰国を間近に控え本格的に準備をスタートさせた私。

一連の作業の中でも何より欠かせないのがPCR検査。これをせずには飛行機にすら乗せてもらえない。ちゃんと検査を済ませたつもりでも、入手した検査証明に不備があって要求を満たさないものと見なされて、最悪の場合は出発時に飛行機への搭乗を拒否されたり、あるいは日本到着後に入国を拒否されるケースすらあると言う。

何が渡航前検査をこうも面倒にしているのかと言えば、やはり検査証明書(陰性証明)に最たる原因がある。厚労省所定の「フォーマット」なるものが存在し、記載されるべき内容も、例えば北米で受けられる一般的な検査を通じて入手できる検査証明書のそれとは必ずしも一致していない。また、厚労省や外務省のサイトによれば「フォーマット」の使用は必須ではないとされながら、空港のチェックインカウンターのような現場では担当者によって対応が異なり、前述したような搭乗拒否まで発生する結果となっているそうだ。

だからネット上で見られる情報も、基本的には「フォーマット」を使うことを前提条件に、如何にして陰性証明を入手したのかについて紹介されているものがほとんどであるように思う。そうすることでリスクを最小限に抑えられるのだから当然だろう。

「フォーマット」を用いた検査証明の発行に対応する検査機関についてはトロントや、私個人にとってはより近い対岸デトロイトにある日本領事館のウェブサイトで紹介している。ところがいずれにしても料金設定が高く、どうにか手軽に済ませられないかと思うのが正直なところ。

その後に私がここウィンザーで見つけたクリニックは150カナダドル(約15000円)で、領事館が案内する検査機関と比べて幾らか安く、「フォーマット」にも対応可能(対応実績あり)とのことだった。それでもやはり悩ましいのに変わりは無い。何しろ航空券が高騰している昨今、帰国の為に既に結構な費用が発生しているのだ。私はひとりでの帰国だが、家族一緒に帰国する場合などは余計にそう感じることだろう。

そんな時にネット上で見つけたのが、アメリカのドラッグストアなどで無料で受けた検査の結果を、少額の手数料で日本の「フォーマット」に書き直してくれるクリニックが西海岸のシリコンバレーにあるという情報だった。

私もこれまでに幾度と無く検査をしてもらったWalgreens(ウォルグリーン)。検査が無料なのは大変有り難いのだが、検査結果のレポート(つまり検査証明書)にはパスポート番号の記入もできなければ、検査法についての記載に不足があり、そのままでは日本への帰国には使えないのが玉に瑕。それでも検査そのものは日本の要求を満たしたもの(ID NOW:NEAR法を用いた核酸増幅検査)であって、全く何の問題も無い。

そこで入手した検査証明を、日本のお上からの要求に沿うように「フォーマット」で作り直してくれるというのがシリコンバレーにある日系のクリニック。依頼から作成、費用の支払に至るまで全てオンラインで完結できるのは、遠いカナダからお願いする上でこれ以上無いメリットだ(ここではあくまでアメリカで検査を受けることを前提としており、カナダで受けたものについて対応の可否は不明)。

ちなみに手数料は50米ドル。カナダドルにすれば65ドル、日本円なら6500円だ。検査は無料で受けられるのだから、あと必要なのはその検査を受ける場所への交通費だけ。私のケースではトンネルの往復に計8.2米ドルが発生するとは言っても、ウィンザーで検査を依頼した時のほぼ半額で済んでしまうのだから本当に助かる。

結果、私が辿った順序はこんな感じだ。

DAY 1

DAY 2

  • 予約を入れた店舗に赴き、ドライブスルーで検体を採取する(搭乗便出発予定時刻の59時間前)
  • メールで検査結果を受信後(検体採取から約2時間後)、シリコンバレーのクリニックのウェブサイトで検査証明書き換えの予約(翌日)を入れると同時に費用の支払を済ませ、別途メールで検査証明とパスポートの顔写真があるページを送信

DAY 3

  • 「フォーマット」に書き換えられた検査証明をメールで受信
  • 入国者健康居所確認アプリ「MySOS」を通じ「フォーマット」に書き換えられた検査証明を送信し、日本入国時の検疫手続の事前登録「ファストトラック」を完了

DAY 4

  • アメリカ・シカゴより日本に向けて出発

カナダ在住者がこのような方法で検査証明を取得したい場合、私のように国境地帯に住み、容易に米加間での行き来ができるか、そうでなければ日本へ出発する前にアメリカ国内で最低1日或いは2日滞在できる時間の余裕がある必要があり、誰にでも可能であるとは言えないのは確か。

ただ、コロナ禍が未だ収束していない今、よほどの急用でない限り帰国前には一定の準備期間があることを迫られるはずで、その点を踏まえれば大半の人にとってこの方法で検査証明を取得するのは決して難しいことではなく、あとは単にこれだけの手順を踏むに値する費用対効果があるかどうかの問題だ。航空券はアメリカから出発した際により安価になる傾向もあり、そこで発生する差額も含めて考えたならなおさら悪くない選択なのではないだろうか。

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