一時期はアメリカから陸路経由でカナダに入国する場合に限って入国前検査が免除になるケースもあったところ、昨今のオミクロン株の流行による感染拡大を受け、カナダ政府が改めて全ての入国者に対し陰性証明の提示を求める決定をしたのは昨年12月の事。
その「一時期」には多くのカナダ人とカナダの永住権を持つ者が、こぞって旅行に、買い物にと、アメリカへと出かけていたものだから、政府の決定にネット上は騒然とし、当然ながらそのほとんどが不満の声だった。元々カナダの全人口の約70%は国境から100km圏内に集中していて、車を1時間も運転すればアメリカに行けてしまう人が大半なのだ。
私は長く国境からは遠く離れた地に生活していたこともあって、それまでなら「自分にはまるで関係の無い話」と思っていたのが、最近になってここウィンザーに引越をしたことにより、この話題に対する注目度も俄然大幅アップしたのである。
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そんな前置きはさておき、今回はカナダ在住者がカナダへの再入国を前にアメリカで受けるPCR検査のお話。
近頃カナダ各州ではそれらしい症状が出ている人でさえ必ずしもPCR検査を受けられる訳ではなくなって来ている状況にある中で、旅行を目的とした検査などは今も昔も当然ながら有料扱い。その費用も決して安くはなく、場所ごとに設定が異なるものの、多くで150ドルから200ドルの間といったところだろうか。
それなのに、お隣りアメリカではアメリカ国民でも、アメリカ在住者でなくても、無料で検査を受けられて、おまけにほんの僅かな時間で結果をもらえると言うのだから、私自身も初めて知った時にはまだ半信半疑だった。
無料で検査を受けられる Walgreens
実際に多くの人がネット上で体験談を報告していたのは、アメリカのドラッグストア大手 Walgreens に於ける検査プロセス。
報告はアメリカ国内の幾つもの異なる州から上がっていて、場所は違ってもその手軽さや、検査から結果を得るまでの所要時間などに大きな差は見られず、あまりに出来過ぎではないかと感じさせられる程、「夢の国」でのまさに夢のような話だった。簡単にまとめて言うと、無料であることに間違い無く、早ければ1時間未満、長くても半日程度で結果が伝えられるらしい。ただ、一点注意が必要なのは、
必ずドライブスルーを利用し、その場で渡された検査キットを使って、車上で検体を自己採取しなければならない
ことで、店舗内での検査は行っていない。
対照的に、他のドラッグストアだと保険やアメリカでの在住証明を求められたり、結果が出るまでの時間もより長くかかったりするとかで、カナダへの再入国を前提に検査を受ける際には勧められないとする声が多くあったのを付け加えておく。
それならばと、アメリカと国境を接するオンタリオ州・ウィンザーに越して来た私も、モノは試しとばかりに早速 Walgreens で予約を入れてみた。
カナダ入国前にWalgreensで受けるべき検査の種類
Walgreens で実施されている新型コロナウイルス感染症検査は以下の3種類。
- Diagnostic Lab Test (PCR)
- Rapid Diagnostic Test (ID NOW)
- Rapid Antigen Test (BinaxNOW)
日本ではPCR検査という言葉が有名になり過ぎた結果、「コロナウイルスの検査=PCR検査」という図式がほぼでき上がってしまったようだがこれは正しくない(それを理解した上でここまでは便宜上「PCR検査」としている)。PCR検査というのはあくまでも新型コロナウイルス感染症の検査方法の1つである「PCR法」を採用して実施する検査を指しているのであって、他にも「LAMP法」や「NEAR法」などといった検査方法があるのだそうだ。
Walgreens で実施されている3種類の検査も、それぞれPCR法(1)、NEAR法(2)、抗原検査(3)と別々の方法が採られていて、カナダへの入国前検査に認められている前の2種のうち、短時間で検査結果が得られるNEAR法、つまり「ID NOW」こそが私も今回申し込んだ検査だ(時間がかかっても構わないのであればPCR法の検査も同様に無料で受けられる)。
参考記事:新型コロナウイルス遺伝子検査「ID NOW」導入のお知らせ ー まなべファミリークリニック
予約の方法と手順
予約を入れるのは至って簡単。氏名、生年月日、性別、人種、アメリカ国内の住所、電話番号等の項目を埋め、その後は幾つか聞かれる質問に答えるだけ。
ちなみに住所については、ネット上のアドバイスにあったように、適当にグーグルで見つけた近隣のホテルのものを書き込み(実際に泊まる予定は無く、ホテル名も特に書かず)、電話番号は日頃カナダで使っている携帯番号を記入することで問題無かった。
質問も、過去14日間にコロナウイルス感染症に関連する症状があったかどうか、感染者若しくは感染を疑われる者との接触があったかどうかといったものや、新型コロナワクチンの接種歴(接種を受けたことがあればその回数と時期)、その他の病歴や既往症などで、答えに頭を悩ませられるような難しい質問は一切無い。
これらの質問を答え終えると、最後に検査を受ける店舗と時間を選んで予約は完了。現在は申込当日を含む向こう3日間までの予約が入れられるようになっていて(2022年1月18日現在)、例えば今日が月曜日の場合、月曜、火曜、水曜に空きがあれば予約が可能といった具合だ。
検査当日
予約を入れた店舗へと赴き、そのままドライブスルーの列へ。早めに着いてしまったら駐車場で時間まで待つか、或いは特に混んでいる様子が無ければわざわざ待つ必要も無いかも知れない(私は予約の時間より30分も前に行っても大丈夫だった)。
- 窓口を通して検査の予約を入れている旨を伝え、促されるままに身分証を提示。身分証は英語表記があり、且つ写真付きのものであればいいらしく、つまり日本のパスポートでも、カナダの運転免許証でも大丈夫。
- 無事に本人確認が済むと検査キットを渡され、中から自分で綿棒を取り出し、手早く鼻の中(1.5cm~2cm)で適度に回して検体を採取したら、
- また綿棒が入っていたパッケージの中に挿し入れ、窓口の向こうに戻してしまえばそれでもう完了。
恐らくは5分もあれば全てを終えてサヨナラだ。
そして結果は・・・?
結果が陰性なら予約時に登録したアドレスにメールが届き、万一陽性であることが確認された場合には、同じく登録済みの電話番号に直接電話で連絡が入るそうだ。私自身これまでに2回 Walgreens で検査をお願いしていて、異なる2店舗ではあったが、そのいずれでも検査完了後40分程でメールを受け取ることができている。
メールにあるリンクをクリックし、開いたページで生年月日を入れると、「Negative(陰性)」の結果が表示される。同じページからは検査内容と結果の詳細が記載された陰性証明のPDFをダウンロードできるようになっていて、このPDFはカナダへの入国時に提示を求められるので必ず保存しておく。
カナダからアメリカに日帰りで出かけるような場合でも、まず初めに検査を受けておいて、あとは心を穏やかにして用事をこなし、まだそれが終わってもいない間にもう結果が届く。まさにウソのような本当の話だった。