カナダの犬種差別?ピットブルを飼っているとトロントには住めない?

特定の人種と犯罪率とを結びつけ、その人種に属する人々に対して一概に居住許可を与えないような町があったなら、この時代では当然ながら大問題になって、ニュースでも大々的に取り上げられるのは間違い無いだろう。



でもそれが犬に対してだったら?

我が家の長女と次女はともに近隣のシェルター(動物保護施設)から引き取った雑種犬だ。

彼女達を家族に迎え入れるにあたり、性格や見た目などが重要であったのはもちろん、もう1点先方と確認した要素が存在した。それがピットブル (pit bull) のミックスであるのかどうかという点。どうしてそんな事を気にしたのかと言うと、カナダ経済の中心であるトロントや、首都オタワといった国内主要都市を擁するオンタリオ州ではピットブルの飼育が禁止されているから。

オンタリオから遠く離れたアルバータに住んでいるなら関係無いのでは?という声が聞こえて来そうだが、日本に負けず劣らずの一極集中現象が見られるカナダではオンタリオこそ全てが集積する場所であり、私だっていつまでも避けて通れるとは到底思えなかった。

そもそもオンタリオで禁止されているのは何もその飼育に限ったことではない。ピットブルを連れて州内に立ち入るのも許されない。つまりカナダを西から東へ、或いは東から西へと移動する際、もしピットブルを連れての旅であったなら、静岡県よりはるかに東西に長いオンタリオを避ける為、アメリカを経由することを余儀無くされる(元よりその方が時間の短縮にもなるのも事実)。

参考記事:Ontario Pit-bull ban prevents Fort McMurray family from travelling to P.E.I.

ここで気になるのはピットブルの定義。オンタリオ州の州法 (Dog Owners Liability Act) によれば、

を含み、これらと外見的、肉体的特徴を共有する犬(雑種犬を含む)についてもピットブルと見なされるとのこと。問題は、何をもって外見的、肉体的特徴を所謂ピットブルと共有しているのか否かの判断を下すのか。判断をする者の主観的要素が多分に含まれる可能性を否定できないのでは、犬とその飼い主が幸福に生きる権利を奪ってしまうことにもなり得る。

日本では、「特定犬」に指定された犬種について檻の中で飼うよう義務付けている地方自治体はあっても、飼育そのものを禁じているというのは、都道府県単位でも、市町村単位でも聞いたことが無い。カナダでも特定の犬種についての飼育可否を州全体に適用される規則で定めているのは、私が知る限りではオンタリオだけで、他州ではあくまでそれぞれの市町村が必要に応じて独自に条例を設け、規制するに留まっている。

実はオンタリオでもこの法律については賛否両論があって、毎年のようにメディアで取り上げられているだけでなく、これまでに幾度か「近々廃止される見込みである」とする報道も見られた。その内最も新しい内容はわずか数日前のものだ。

参考記事:Doug Ford’s government changes regulations related to pit bull dog ban – Global News

少なくともアルバータ州に於いて、シェルターで保護されている犬の中にピットブルのミックスが占める割合は決して小さくないし、散歩している時にもピットブルらしき犬には頻繁に出会う。彼等を完全に排除してしまったら町の景色までもが変わってしまうのではないかと思うぐらい、ここではピックアップトラック同様、もう当たり前のように見かける存在だ。

ところが今回実際にオンタリオへと引越することになった私。トロントでもオタワでもなく、逆にアメリカは目と鼻の先だけど、それでも自分が住むのはオンタリオ州内であることに違いは無い。だからあの時ピットブルを引き取っていなくてよかったと改めて思う。きっとみんな今頃は他の誰か心やさしい人達と一緒に暮らしているだろう。私にはただそう願うしかない。

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