ウィンザーとはどんな町?生活を始めて1ヶ月の今日までに覚えた印象から

カナダにやって来てそろそろ6年、ようやくこの国に少しずつ興味を持ち始めた頃。そんな私だから何にも詳しくないし、もし実際に訪れた経験が無ければ、大抵の町はどうにかその名前を耳にしたことがある程度で、これといった印象すら持たない。



当然ウィンザーについてもそんな「大抵の町」の中の1つに過ぎなかった。

アブドーラ・ザ・ブッチャーの故郷

アルバータ州・エドモントンから、東へ遠く離れたここオンタリオ州・ウィンザーへの引越が決まった時、私が何とか知っていたのはこの町がアメリカとの国境沿いに位置し、その向かい側には治安が全米最悪とも言われるミシガン州・デトロイトがあるということぐらいだ。だからカナダでも有数の自動車産業の町であるだとか、この国を代表するウイスキーの銘柄である「カナディアンクラブ」の産地だというのも知らなかった。

それでも家探しに初めて訪れた際に受けた印象は結構よかったし、ネット上でこの町について調べていた時に見つけたアブドーラ・ザ・ブッチャー(本名はローレンス・ロバート・シュリーヴさんというそうだ)の故郷であるという事実は、私にも不思議な親近感を抱かせてくれるのに充分だった。

カナダなのに冬の寒さが厳しくない

エドモントンから越して来たというのもあるのだろうが、私にはウィンザーの冬がとてもやさしく感じられる。いや、冬の寒さが好きだから、やさしいと言うより実は物足りなささえ覚える。日中の最高気温が零度を超えるような日が続いたりして、コートやマフラー未着用の状態で犬の散歩に出かけられてしまったりする。

ただ湿度が高い日も多く、そういった日の寒さが気温に関係無く堪えるのは過去に住んでいた香港にも似て、近年殊に言うことを聞かなくなった膝にはそれこそ油でも差したくなる。

元々の降雪量が少ない上に、路面の整備が比較的良好である(らしい)故に、トロント一帯を含むオンタリオ南部ではスパイクタイヤの着装が禁止されているらしく、エドモントンでなら頻繁に耳にする走行中の車が小さくカチカチとたてる音もここウィンザーで聞くことは無い。そんなどうでもいいような音でも、ひとたび聞けなくなってみると妙に懐かしく思うものだ。

アメ車の割合高し

自動車の一大生産国であるアメリカですら日本車や韓国車が小さからぬシェアを有しているように、カナダでも多くの都市でトヨタやヒュンダイといったメーカーの車を頻繁に目にする。ところがウィンザーに住んでみて気づいたのは、この町に限ってはクライスラーやフォード、そしてシボレーにジープなど、アメ車の占める割合がとにかく高い点。

クライスラーについてはウィンザーに組立工場もあることから、社員さんやその周りの人達が購入していたり、地元の産業を守る為にとの考えから支持している人も居るのかとは思うものの、その他のメーカーの車までもが多く走っている現状を見ると、やはり米加国境に位置する町だけあって、精神面でもアメリカとの結びつきがより強いのだろうかなどと勝手に想像してしまう。

かく言う私の所有する車もジープ・チェロキー。海外での生活だし日本車以外に乗ってみたいと思い、ところが残念ながらカナダ車なるものは存在しないから、結局アメ車であるジープを選んだのだった(購入自体はウィンザーに越して来るよりずっと前の話ではあるのだが)。

古い建物が連なる街並に酒香る

あれは引越が済んでレンタカーをハミルトンまで返しに行き、電車に乗ってウィンザーに戻って来た時の事。ホームに降り立つと強烈な匂いが鼻をついた。それは駅のすぐそばにそびえ立つウイスキーの蒸留所から漂うものだ。私達がよく知るウイスキーの芳しさとは違うその製造工程でこそ発せられる独特の香りは、以前に地元山梨のサントリーウイスキー蒸留所でも嗅いだ記憶がある。

これは古い町ならではなのかも知れないのだが、この蒸留所にしても、クライスラーの工場にしても、町の中心から遠くない場所にあり、特に前者に至っては周辺の住宅地と一体化しているような位置取りだ。駅までは歩いてでも行ける私の住む家だから、その日の風向きによっては隣接する蒸留所からの匂いが届いて来る。特に煉瓦造りの建物が多いこの界隈で嗅ぐと、ヨーロッパにでも居るかのようで余計に悪い気はしない。

ついでに一点触れておきたいのが個人経営の店舗の多さ。古い街並をありのままの姿で大切に使うようにして、現在の日本ならばシャッター通りでぎりぎり生き残っているようなお店も、ウィンザーではまだ元気に営業を続けているのはうれしい。

ちょっと残念なウォーターフロント

それが川であろうと、海であろうと、水のある町は魅力的に映る。ウィンザーとデトロイト、つまりカナダとアメリカを分かつのも、その名もデトロイトリバーという川で、画像(若しくは映像)で川沿いに広がる景色を見るとなかなかに美しい。

ところがそういった絵にはまず映らないものがある。折角のウォーターフロントに敷かれた遊歩道なのに、私達の足の踏み場を無くす程にグースの糞が落ちているのだ。

グースは図体が大きいだけあってその排泄物も相当ボリューミー。子犬のそれより大きいのがあちこちに転がっているのには全く閉口させられる。犬の散歩道にと考えていた私もその惨状を見て失望してしまった。どうせパスポートもビザも必要無く、ほんの僅かの労力でデトロイトまで飛んで行けるのだから、グース達には是非とも対岸で排泄を済ませてくれるようお願いしたい。

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