デトロイト・ウィンザー間の国境越えは結構面倒?

地図上で見ても、国境線に立って見ても、ここウィンザーから対岸のデトロイトまではまさに「目と鼻の先」。車を運転して通り抜けるのに、渋滞さえ無ければ10分足らずの距離だ。ところが、自分で運転できる車が無いともなれば話はそんなに簡単ではない。

世界最長の国境線を擁するカナダとアメリカにあっても、それなりの規模の都市同士が隣り合わせにあるのはここぐらい。そんなウィンザーとデトロイトだから、両都市を結ぶ橋とトンネルでは毎日多くの車が往来しており、かく言う私も1週間から2週間に一度は対岸まで買い出しに出かけ、国境都市に住むメリットを存分に享受している。

ところが、観光やビジネスといった目的でたまに一度の国境越えをする人にとって、デトロイト・ウィンザー間を移動するのは案外面倒なのかも知れない。

国境間移動手段の選択肢は5

ウィンザーとデトロイトの間で国境越えをする場合、その交通手段として選択肢に挙げられるのは

  • 自家用車
  • レンタカー
  • バス
  • タクシー(もしくはUber)
  • 乗合タクシー(デトロイト空港〜ウィンザー間限定)

の5つになる。

感覚的にはそれこそ香港島と九龍ぐらいの距離に過ぎないのだが、残念ながらこちらには電車やフェリーといった移動手段は用意されていない。

車(自家用車・レンタカー)で移動する

これらの選択肢のうち、前者2つ(自家用車、もしくはレンタカー)を利用して移動する分には特別難しいことも無く、いずれの国に抜けるにせよ、入国条件さえ満たしていれば24時間いつでも好きな時に国境越えが可能だ。

通行料(2023年7月現在)は、

ウィンザーからデトロイトへと向かう場合
トンネル:6.75カナダドル
橋:9.25カナダドル

デトロイトからウィンザー方向に行く場合
トンネル:6.50米ドル
橋:7.00米ドル

であり、トンネルの方が幾分安く設定されている。

ちなみに、橋とトンネルの通行料の支払手段はカードのみ。現金が使えない点には要注意。

バスを利用する

もし自家用車もレンタカーも無く、それでもこの地点で国境越えをしなければいけない理由がある場合、恐らくはバスが最も便利な移動手段になるだろう。

ウィンザーとデトロイト間で運行されているバスには2種類あり、Transit Windsor(トランジットウィンザー、つまりウィンザーの市バス)の路線バスと、TrailwaysFlixBus の2社がそれぞれデトロイト〜トロント間で運行している長距離バス(ウィンザーでの途中乗車 / 降車が可能)がある。

ー Transit Windsor を利用する

料金:片道10ドル

  • 支払いは現金でのみ可能で、お釣りは出ない
  • カナダドル、米ドルのどちらでも可

運行区間:ウィンザーとデトロイトのダウンタウン間

*その他、乗降可能なバス停が数箇所あり。また、道路工事や交通規制などの原因で運行路線が変更になる場合がある点には要注意。グーグルマップや Transit Windsor のウェブサイトで事前に確認しておくと安心。

運行頻度:1時間に1本

  • 月曜〜土曜:朝6時台から夜9時台まで
  • 日曜:朝8時台から夜7時台まで

*時刻表は Transit Windsor のウェブサイトで確認できる。

ー Trailways / FlixBus を利用する

料金:片道12.99カナダドル(9.99米ドル)〜

  • 変動制を採用し、需要の増減で価格の上下あり
  • チケットはネット上で購入(要クレジットカード)

Trailways 運行区間:

FlixBus 運行区間:

運行頻度:計3本 / 日

  • Trailways:1本
  • FlixBus:2本

ー バス利用時の注意点

有効な I-94 があるかどうかの確認必須(アメリカ入国時)

日本のパスポート所持者は、過去3ヶ月以内にアメリカに入国した履歴が無い場合には新規で I-94 を取得する必要があるところ、アメリカ及びカナダ国籍者(バスを利用する乗客の大半がアメリカ人とカナダ人)はそれを求められない。つまり、一個人の「例外」によりバスの正常運行を妨げ、その結果非難の嵐にさらされる可能性があることを覚悟しなければならない。

Trailways と FlixBus は大幅な遅延の可能性あり

Trailways と FlixBus のデトロイト方面行きをウィンザーから利用する場合、そのいずれもがトロントを起点としており、道路状況によってはウィンザー到着までに既に大幅な遅延を起こしている可能性も少なくない。

タクシー(もしくは Uber)での国境越え

自家用車やレンタカーが無い状況では、最も手っ取り早い移動手段として思い浮かべるのがタクシー。しかしアメリカとカナダの国境線を跨ぐともなると事情はいささか異なって来る。

その最大の理由はパスポート。初めから国境を越えて行くつもりの当人はパスポートを準備していても、タクシーの運転手は必ずしもいつもそうではない。デトロイト側、或いはウィンザー側で走ることしか想定していないのなら、当然そんなものを手元に置いておく理由も無いからだ。

ところが、デトロイトのあるアメリカ・ミシガン州では、カナダへの入国に際してパスポートの代わりとして使える機能が付随されたタイプの運転免許証を発行することができ、このタイプの免許を持つタクシー(や Uber)の運転手であれば、国境を越えてウィンザーまで走ってくれるかも知れない。

逆に、ウィンザーのあるカナダ・オンタリオ州では現在そのような免許証を発行していない為、事前にタクシー会社に電話予約でも入れておかないとデトロイトまで行く車を見つけるのはまず無理だし、I-94 をアメリカ入国時に新規で取得しなければいけない乗客などは余計に嫌がられてしまうだろう。

デトロイト空港〜ウィンザー間の移動は乗合タクシーが便利

デトロイト空港とウィンザーの間での移動なら乗合タクシーも考慮に入れたい。

料金:片道73.65カナダドル / 人

運行区間:

  • Holiday Inn & Suite Windsor, Ambassador Bridge (1855 Huron Church Road, Windsor)
  • Detroit Metropolitan Wayne County Airport(予約時にターミナルの指定可)

運行頻度:5往復

入国の難度は「アメリカ>カナダ」

同じ陸路での入国でも、アメリカとカナダでその難度は全く異なる。

ー 陸路ならアメリカからカナダへと抜ける方が簡単

陸路経由での国境越えでカナダへと入国するのは至って簡単。

自家用車やレンタカー、一般的なタクシーでの移動なら、入国審査が高速道路の料金所のようなブースが並ぶ場所で行われる「ドライブスルー」形式になる。つまり車から降りる必要すら無く、入国審査官の質問に答えて問題さえ無ければそのまま通過できる。

バスや乗合タクシーを利用する場合は、一旦下車してオフィス内で審査を受けなくてはならないものの、こちらでも旅行の目的や予定する滞在期間等の質問にさえ答えればいいだけ。

また、日本のパスポート所持者については、空路でのカナダ入国時と異なり、陸路からの入国には eTA が不要であるのも大きなメリットになる。

ー カナダからアメリカへ陸路での国境越えは面倒かも?

対して、陸路でカナダからアメリカへと国境を越えるのは、自家用車やレンタカーを使って移動するのでなければお勧めできないケースがある。

それが前述したとおり(「バスを利用する」の項参照)、I-94 を新規で取得しなければならないケース。日本のパスポート所持者の場合、過去3ヶ月以内(アメリカの非移民ビザがあれば6ヶ月)にアメリカへの入国履歴があれば(空路、陸路等の経路を問わず)、原則としてその際に取得した I-94 が効力を残していることになるが、期限を過ぎてしまっていると新規での申請、取得が必要不可欠だ。

この場合、事前にオンライン申請を済ませていたとしても、実際のアメリカ入国時には必ず車から降り、オフィスで入国審査官とのやり取りに、顔写真撮影と指紋採取を経た上でようやく正式に取得という流れになる。よって、バスやタクシーを利用をすると、同乗者ではあっても同行者ではないその他乗客や運転手に時間的損失をもたらす状況を生み出しかねない。

最後にもう一点、陸路からのアメリカ入国に以前は求められなかった ESTA だが、現在は事前取得が必須になっていることにも注意が必要だ。

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