外国の市民権を取得後に日本の運転免許は使えるのか

カナダの市民権を取得すると決めてから一つ気にかかっていたのは、結果として日本の国籍を失った後にも日本の運転免許証が有効であるのかどうかだ。

日本の運転免許証には住所が記載されている。海外に住んで長くなるも、日本の実家に住民登録を残したままの状態であったから、私の免許証にあるのは実家の住所だ。

ところが、数日前にカナダの市民権を取得し、同時に日本国籍を喪失したことにより、当然ながら私の名前も住民票から外されることになる。それでは、この手元にある免許証は今後日本に帰った時にまだ使えるのだろうか?それとも、有効期限が来るのを待たずして失効してしまったのだろうか?

山梨県警に問い合わせてみた

海外在住であり、且つ時差もある為、電話以外の方法で問い合わせができればと思っていたら、山梨県の場合は県警のサイト上にあるフォームから問い合わせが可能であることが分かった。

早速問い合わせたところ、半日もかからずに返答を頂くことができたのはさすが日本(単に山梨が田舎だからなのかも知れない)。

その返答内容はこちら。

「有効期限までであれば効力を残したまま、短期での訪日期間中でも日本国内で運転が可能です。また、免許証の記載住所を山梨県内に変更する場合は、山梨県の免許センター、警察署で手続き出来ますが、山梨県外に変更する場合は変更先の免許センター等での手続きとなります。」

ご返答を頂けたのは有難いと重々承知しているものの、正直この内容だけでは私が知りたいこと全てに回答してもらえているとは言い難い。免許証自体の効力は残るとのことではあったが、最低限そこに記載される住所は変更しなければいけないのではないかという点に対しての回答が無かったからだ。そして、住所変更についても日本在住であるという前提のもとで回答していて、私のように免許証に記載可能な日本の住所が無い者はどうなるのかは分からないままだ。

確かに同じ外国人であっても、長期滞在ビザを持ち、外国人登録も済ませ、日本で生活している人ならば、免許証に記載できる住所があるから元々何の問題も無いし、日本国内で引越をした場合にも、今回の返答内容にあったような手続をすることで、免許証の記載住所を変更できるだろう。

しかし私は日本に住む訳ではなく、事実上ただの外国人観光客と何ら変わる点は無い。その間に滞在することになる実家は、宿泊地ではあっても、果たして本当に住所として捉えられるものなのだろうか?

自分が珍しい存在で珍しいケースであることをより強く意識した上で再度問い合わせた

元々山梨のような場所では外国人もそうそう見かけないし、警察からしても、免許を取ろうとしたり、若しくは更新したりしようとする外国人に遭遇する機会もあまり無いのではと想像する。私のようなケースは恐らく更に珍しくて、だからこそこちらからの質問の内容に対しても理解が追いつかないのは仕方の無いことだと思う。

幸いにも「ご不明な点等ありましたら、本メールにご返信ください」と丁寧なオファーを頂いていたので、そんな私のような珍しいケースをどうにか理解してもらえるようにと改めて書いて送信したのが以下の内容。

「運転免許証をそのまま使えるとのことですが、私の懸念は免許証に記載された住所にあります。海外に移住してからも○○市に住民票を残しておりました為、免許証を山梨県で発行してもらうことができましたが、この度カナダに帰化したことにより、自動的に住民票も抹消される流れになり、○○市を含め日本のどこにも住所が無いという結果になります。

短期での訪日期間中に滞在するのは実家のある○○市であることに変わりはありません。しかし、本来の意味での「住所」ではありませんので、その○○市の住所が記載されたままの免許証を使って運転することが法律上問題無いのかという点を心配しております。

このような事情の下で、もし免許証が依然効力を残すものの記載事項の変更が必須となる場合、その申請に必要な提出書類が御座いましたらご教示頂けますと幸いです(先のメールで頂いておりますリンク先を見ると変更には住民票が必要とありますが、外国籍となり、且つ日本での長期滞在を前提として発行されるビザも無い為に住民登録はできませんので、住民票を提出することは事実上不可能です)。」

さあ、結果はどうだろうか。

結論:日本国籍喪失後も引き続き日本の運転免許証を使える

週末を挟んで先方から頂いたご回答。

「お持ちの運転免許証の有効期間中であれば、国籍が海外の場合であっても日本国内の運転には法律上問題はありません。免許証の記載事項を変更される際は、変更先の住所に居住されている方に「一時滞在証明書」を記載いただいてそれをご持参いただければ変更ができます。」

つまり、元々免許証に記載される住所は日本国内で一時的に滞在する場所でも問題は無く(これを私は知らなかった)、私のように日本国籍喪失前後でその場所(実家)が変わらないケースでは、少なくとも住所に関しては記載内容の変更を申請する必要も無いと言うことらしい。

その後、改めて更新の可否についても問い合わせた。

「日本国籍がない場合であっても、現在の日本の運転免許はそのまま更新できます。ただし、有効期限を過ぎてしまいますと、失効の扱いとなり、再取得する場合住民票が必要となりますのでご注意ください。」

運転免許失効後の再取得には住民票が必要と言うことは、逆に言えば、有効期間中の更新であれば住民票は不要であり、前述のように、住民登録が無くても「一時滞在証明書」さえ提出すれば更新は可能であると理解していいのだろう。

では、名前の変更は必要無いのか?日本名が「山田花子」のところを、外国籍になったことで「HANAKO YAMADA」の記載に変更しなくてはいけないのではないか?この点についても聞きたかったのだが、それまでのメールでのやり取りでいい加減疲れてしまったので、また次回日本に帰国した時に直接免許センターに出向こうかと思っている。

関連記事:『日本国籍喪失後の日本の運転免許証 名前はそのままで使える?』

オススメのダシガラより

元日本人の「一時帰国」体験談一部抜粋

国籍上既に日本人ではなく、かと言って純粋な外国人でもない。そんな微妙な立ち位置だからこそ初めて知ることになった自らの無知加減と対応の難しさ。

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