帰宅後は仕事の電話に出なくてもいい?カナダのワークライフバランスの真実

「欧米」という言葉で地理的に括られる国々を、一種の憧れを持ってあたかも理想郷であるかのように語ったのはもう昔のこと。21世紀に入り、様々な新しい概念が世の中に登場し始めた中、昨今特に注目されるのがワークライフバランス。ここでもカナダは人が思うほど理想的な状況にあるとは言えない。

帰宅後も次々入るメールと電話

カナダで働いていればワークライフバランスがしっかり取れて、帰宅後は完全に自分の自由になる時間が待っているなんて、多くの人にとっては夢物語みたいなものだろうと思う。

かつて日本人も言われたように「働きバチ」の如くやたら生真面目に働く同僚が居たり(こういう人は実は想像以上に多い)、或いはまだカナダに移民したばかりの上昇志向が強い同僚が居れば、結局は自分もその雰囲気に巻き込まれる。「できる人なら就業時間内に上手にこなす」と言う人も居るのだろうが、元々仕事はグループで完成させるものだから、いつでも自分次第という訳にもいかない。

その上、カナダでは会社が社員を切るのは結構簡単。

カナダの制度的にリストラは簡単だから、どれだけ理不尽だと言ったところで切られるものは切られる。つまり、帰宅後に来た電話やメールを無視したせいで非協力的だと見做された挙句に解雇される(無論、解雇の理由はオブラートに包まれる)、などというのも決してあり得ない話ではないのだ。

また、このように時間外労働するのを迫られるのは、職場での立場が上に行く程に顕著であるように思われる。立場が上になり、より大きな責任を背負ったことで、それまで以上に逃げ切れなくなって、時間内だろうが、時間外だろうが、否応なしに人の尻拭いをさせられ、同時に「会社に貢献していますよアピール」をするよう求められる。

帰宅後の自由を保障するオンタリオ州の新法は画期的?

ところがその状況を覆すかも知れない法律が、今月(2022年6月)ここオンタリオ州で制定、施行された。

「Right to disconnect」、切断する、つまり仕事との繋がりを断つ権利を認めるもので、州内での従業員数が25人を超える企業では、社員が勤務時間外にその職務に関して連絡されない権利を有することを、書面上で規定するよう義務づけられる。

このような法律はヨーロッパのフランスやポルトガルで既に施行済みで、カナダではオンタリオ州が先陣を切って導入に至ったそうだ。

参考記事:Ontario becomes first province to mandate policies on disconnecting from work – CTV News

しかし、私はカナダがグレーゾーンを設けるのに長けた国でもあると思っている。

例えば、私達移民がカナダで仕事を探す際、どれだけ見栄えのする職歴があって、スキルドワーカークラスで国から永住権を付与されていたとしても、多くの企業がまず何より先に求めるカナディアンエクスペリエンス(カナダでの職歴)が無い為に就職を阻まれたり、経験に見合わない条件で働くことを妥協せざるを得ない人が大勢居る。

また、同じ条件を兼ね備えていても、履歴書に書かれた名前から明らかに移民やその後世だと分かると、そうでない人に比較して書類選考の時点で切られやすい傾向があるのも事実として報道されている。

参考記事:Immigrant project highlights unfairness in Canadian hiring practices, newcomers say – CBC/Radio-Canada

グレーゾーンを生みやすい土壌があって移民を弱者たらしめるのか、それとも移民が多いせいでグレーゾーンを生み出したのか、どちらが先かは分からなくとも、グレーゾーンを暗に容認しているのがこの社会だ。

そんなグレーゾーンの存在に見て見ぬ振りをできない移民だからこそ、折角できた法律も形骸化して、結果としてまた制度の裏表に翻弄される人を増やすのではないかと、私個人は懸念している。そして万一、ここでもグレーゾーンが生み出されてしまった場合に、その影響を最も直接的に受けるのが移民になってしまわないかとも心配なのだ。

関連記事:『もしホンネしか話す事のできない世界だったら カナダ人は一体何を話すだろう?』

隣りの芝生は青い?スウェーデンの場合

私が日頃から見ているYouTubeチャンネルに、スウェーデンのストックホルム在住の日本人女性お2人が配信しているものがある。

移民大国や大自然の景色といった「明るい」テーマで捉えられがちなカナダと同じで、スウェーデンも北欧の福祉大国とのイメージがつきまとう先進国として度々メディアで取り上げられる。しかしこのチャンネルでは、スウェーデン在住者ならではの視点から現地事情をより幅広く紹介していて、中でも時に彼女達を取り巻く状況について、諷刺の要素を取り入れつつ半ば自虐的にして(あくまでも明るく)繰り広げられる話に、住む国こそ違えど、同類相憐れむが如く興味津々に聞き入ってしまう。

そんな彼女達も、スウェーデンに於けるワークライフバランスについて動画を上げていた。

こちらの内容だけを見れば、スウェーデンの仕事環境は誰もが羨むべき状況にあるようにも感じられる。

ところが・・・

こちらもあわせて見てみれば、個人のワークライフバランスを保障する為に、集団がそれ相応の犠牲を払わなくてはいけないことも想定した制度を設けていて、時にはその制度が必ずしも有効に作用しないケースがあることが分かる。とは言え年に5週間もの有給休暇をもらえるのだからまだ恵まれているとは思うが、恐らくスウェーデン人からしたら「それとこれとは別」なのだろう。

参考記事(フランスの場合):『メール禁止はつらいよ バカンス大国フランスの「つながらない権利」険しい道のり』ー 朝日新聞GLOBE+

コロナ禍で在宅勤務が常態化し、仕事とプライベートの境界線が曖昧になったことで論議に拍車をかけた末の結果でもある当地カナダ・オンタリオ州での「繋がらない権利」法制化。今後ワークライフバランスをどのように変えて行くのだろうか。

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