犬と旅するカナダ コロナ禍の最中にアルバータからオンタリオへ大陸横断ドライブを計画する

世界第2位の国土面積を誇るカナダ。そんな広い国を自分で車を運転して横断するのはこれが2度目になる。前回は大西洋沿岸のニューブランズウィック州からロッキー山脈の麓アルバータ州へ。そして今回はアルバータ州から五大湖の畔にあるオンタリオ州まで約3800kmの長旅。

そんな今回、大きく前回と異なるのは2匹の愛犬と一緒に旅することだ。



車での長旅は人だけでなく犬も疲れる。それが何日も続くのならなおさらだ。適度に休憩を取り、軽く体も動かして、苦痛にならないようにしてやらないといけない。

どうしてわざわざそんなに遠くまで運転して行かなければいけないのか。理由は簡単、ただの引越だ。ロマンもへったくれも無い。

約3年前に1度経験して知ってしまったのは、自然の宝庫などと称されるカナダでも、大陸横断で走る大半の地域にはこれと言った見所が無いという事実。頑なにルートから逸れようとせず、とにかく目的地に向かってひたすらに車を走らせた結果、時にトイレを探したり食べ物を見つけたりすることすら「イベント」と呼んでしまいたい程に、他には本当に何も無かった。

でも今回は事情が違う。アルバータに来てから引き取った2匹の愛犬と旅を共にするのだ。道中に休憩を兼ねて土を踏ませてやりたいし、草の匂いも嗅がせてやりたい。だから引越は基本的に業者さんに任せて、車には必要最低限の荷物だけを積み、ちょっとした旅気分で出かけたいと思っている。



カナダを東西に貫くトランスカナダハイウェイも、実際に風光明媚の言葉で形容できそうなのはごく一部の区間に限られる。特にアルバータ州からマニトバ州までを跨ぐ「プレーリー (the prairies) 」は延々と続く大平原で、いつまでも変わり映えのしない景色の中を走ることになる。

ただ、その旅気分とやらが自分だけのものに終わらず、犬も同じようにいい思いをできるようにする為には、前もってしなくてはいけない準備も当然少なくない。

まず初めに、車の中での居住空間にも犬が長旅に耐え得るだけの余裕を持たせられるようにしなければならないから、その分持ち運ぶ荷物を減らす必要がある。2匹そろって25kg前後と、大型犬とは言わずとも決して小さい犬達ではないし、私が所有するような普通のSUVでは元より大した広さも無い。

そしてルート上、どこに犬達が体を動かすのに適した場所があるのか、そしてどこに犬達と一緒に泊まれるリーズナブルな宿泊施設があるのかといったような事も、出発前からある程度調べておかなければいけないだろう。ましてや今はカナダもコロナ禍の真っ只中。平常時とは状況が大きく異なるのだ。



プレーリー3州(アルバータ、サスカチュワン、マニトバ)を過ぎるとようやくオンタリオ州に入り、そこからは「五大湖」に含まれるスペリオル湖やヒューロン湖の沿岸を走るルートが長く続く。湖とは言ってもまるで海にしか見えない程の大きさを誇り、中でも最大のスペリオル湖 (82,200㎢) は北海道本島 (77,984㎢) よりも大きい。

そういった点を考慮に入れて、全行程を5日、場合によっては6日間かけて走破することを計画している。アルバータ州から出発し、走行経路の順番にサスカチュワン州とマニトバ州でそれぞれ1泊ずつして、東西に長いオンタリオ州に入ってからは、引越先の最終目的地に着くまでに最低でも2泊、余裕を見るなら3泊が必要になるという計算だ。

この場合1日の移動時間は6〜8時間になり、途中に挟む休憩や食事、犬達との散歩に費やす時間を考慮しても、翌日に疲れを残さない程度に動けそうな気はしている。

また幸いにも、これまでに調べてみた限りでは犬と一緒に泊まれるホテルは各地にあるようだし、特にこの需要減の時にあっては宿を探すのにもそれ程の苦労もせずに済みそうだ。それならば状況に応じてスケジュールを組み立て直すことだってできる。



コロナの蔓延による移動制限でアメリカを経由するということが叶わない以上、大陸横断に使えるルートに選択できるだけの選択肢はもうほぼ存在しない。冬が近づけばなおさらで、とにかく安全に走行できることを最優先に行く必要がある。

更には、偶然グーグルマップとにらめっこしていた際に見つけたフェリーを使えば、いい具合にショートカットになるだけでなく、ありきたりな景色ばかりが続く中で少しばかりの気休めにもなるだろう。そう思っていた。

ところがさっき改めて運航スケジュールを確認したところ、なぜか10月17日までのものしか掲載されていない。そして私は気がついてしまった。そうだ、湖は凍るのだ。カナダに来て5年にもなるのにそんな事を忘れていただなんて。

寒いであろうことに全く思いが寄らなかった訳ではない。犬と一緒にフェリーに乗るならば、甲板以外の場所は犬を連れて歩くこともできず、その間吹き荒ぶ風に打たれるがままでなくてはいけない。そこまでは頭が回ったのに、海のように大きな湖が丸ごと凍ってしまうのに気づくまでは回り切らなかった。なんとも残念だ。



ただ寒いだけでなく、至るところが凍りつくカナダの本格的な冬がやって来てしまう前に何とか引越を済ませたいところだが、さあどうなることやら。

アメリカを通れず、フェリーにも乗れずで、人様なら夢に見るような大陸横断の旅でも私が向き合う現実は厳しく、旅気分で出かけたいなどという思いも既に萎え始めてしまった気がする。「元々引越の為なのだし」などと言ってしまえば最後の希望のかけらさえ消えてしまいそうで、自分で言っておきながら、まずは何も聞こえなかった振りをしてみる。

そして昨日は当地の市立図書館でガイドブックの取り寄せを依頼しておいた。カナダを紹介した最新の2冊。実際に引越すまでにはまだ時間があるから、犬達の為にも、自分の為にも、もう少し悪あがきをしようと思う。