カナダに暮らす英語弱者が医者と向き合う時に覚える無力感

新しく眼鏡を作る為に、昨日近所のコストコに入っている眼科へ視力検査に行った時の事。

単なる視力検査と高を括っていた。どうせいつものように「右!」とか「下・・・かな?」なんてやれば終わりだと思っていた。

ところが初めの時点から何やら様子がおかしかった。受付で家族まで含めて様々な病歴の有無を確認されたのだ。そんなものいくつも聞かれたところで、私に理解できる病名の英単語などほぼ無いに等しい。だから私はバカのひとつ覚えのように、ただひたすらに「いいえ」を繰り返すのみ。

その後の検査は更に想像を遥かに超えて本格的だった。日本であったら「こんなに本格的にやってくれるんだ」と有り難く感じそうなものであっても、それがカナダでとなれば話は別で、私には有り難迷惑以外の何ものでもない。内容が本格的且つ複雑になればなる程、それだけ医者との会話もボリュームアップするから。受付で既にギブアップ状態に陥っていた私はもう泡でも吹かんばかり。全てを終えて出て来た時には完全に疲労困憊といった有り様だった。

そしておかしな事に、眼鏡を作る目的で視力検査を受けただけのはずなのに、何故か勧められるがままに次回の予約を入れてしまった。お医者さんが何らかの問題を見つけたらしく、その検査が無料である事は理解できた。一体どのような問題があるのかはその場では分からずじまいだったが、ブラックコマ?という響きの単語を繰り返し言われたのは覚えていた。

どうせ無料だから(州の医療保険でカバーされる)と、さして悩まずに予約を入れてもらったものの、そのブラックコマとやらが何かを知らないままで検査を受けるのもどうかと思い帰宅後にググってみた。

black coma eye(ブラック コマ 目)

すると「glaucoma」という単語が検索結果のトップに表示され、それが何かを意味するのか調べてみると緑内障とのこと。そこで私は初めて納得がいったのだった。私はもう10年近く前から眼科検診を受ける度に眼圧が高いと言われ続けていて、眼圧が高い=将来緑内障になる可能性がある、だから定期的に検診を受けるようにと勧められても来たのだ。

ただ、過去の検診はいずれもカナダ国外で受けたもので、日本語でなら「緑内障」、中国語であれば「青光眼」と説明してもらえば理解できても、英語環境で医者にかかった経験が無い故に、いきなり「glaucoma」と言われてもそれが何か分かるはずも無かった。せめてグリーンやら、ブルーやらといった言葉が含まれていれば想像できそうなものを、などと恨んだところで仕方無い。ちなみに白内障は「cataract」と言うらしく、これまたホワイトなんちゃらとか分かりやすい言葉ではない。

それにしても改めて思うのはグーグル先生の偉大さだ。

英語の環境で暮らせば自然と英語が話せるようになる?

そんなのは、特に40を目前にようやくカナダにやって来た私にとってはまるで夢物語に等しい。当然努力次第ではある程度のレベルまで話せるようにはなるのだろうけれども、残念ながら努力だけではどうにもならない事もあるのだ。ましてや普段の生活で触れる機会の無い範疇に含まれるような単語は、若い時から十年数十年の時を要して何度か耳にすることで初めて覚えられるものであるから、中途半端に歳を喰った人間にはそれを上手に使いこなすどころか、1つ覚えるだけでも一苦労だ。

それなのに今後も歳を重ねて行けば、医学用語などは無理やりにでも覚えなくてはいけない場面が増える一方であろうことはなかなか皮肉なものだと思う。でもそれが海外で生活するということだし、それを選んだのはまぎれも無く自分自身。

少なくとも今回の経験を通じて眼科治療が公的医療保険でカバーされる事実を知ることができたし(これまでは如何なる眼科治療や検査もカバーされないものと勘違いしていた)、カナダで眼鏡を作るのは結構面倒であるのも知った(コロナ禍さえ無ければ帰国した時に作るはずだった)。ここ1年の間にコロナウイルスの検査を受けたり、ワクチンを打ったりしたのと同じで、経験から学ぶ事は決して少なくなかった。

次回の予約は2週間先。それより前に我が家のお犬様を病院に連れて行く事になっている。私よりも病院にお世話になる機会の多い娘の為にも、四十代も既に中盤に差し掛かった私とはいえ日々学ばなくてはならないのだ。

こちらのダシガラもオススメ

最近できたてのダシガラ