ようやくどうにか一時帰国を考慮できる状況になって来た。ここカナダを含む大半の国からの帰国については、ブースター接種まで済ませていれば日本入国後の隔離や待機は不要になったからだ。
私自身、最後に帰国したのは2020年の1月下旬の事で、その直後にはコロナが世界中で蔓延してしまったし、何よりニュースから伝わる日本国内の雰囲気を感じて、とてもそのような状況下で帰国する程の勇気など持てなかった。既にどうにも抑えられない状況を作り出すに足りる感染者数を国内だけで「まかなって」いたにもかかわらず、政府は馬鹿の一つ覚えのように「要請」を繰り返すばかりで、対して海外からの入国者には必要以上に厳しい制限をかけ続けるという、どこか非科学的で、且つ排他的な対応がなされていた感があったのは否めない。
入国規制が緩和されたとは言え、国境を超えての移動には今もなお高いハードルがある。
まず何より費用が高い。飛行機の便数そのものが少なく、また日本は入国者数の制限を設けている。つまり規制緩和を受けて日本への渡航を予定する人が増えても、受け皿の絶対数が小さいところに人が集中する結果を生み出し、チケットの値段が高止まりしてしまっているのだ。
私が今回購入したチケットは普段の倍近い値段で、それもヨーロッパ経由で遠回りして日本へと向かう便のもの。おまけにすぐお隣りのデトロイトからでも、次に近いトロントからでもなく、電車で5時間半+地下鉄で50分かけてようやく辿り着くシカゴの空港発。そうでもしないとあまりに高くて手が出せなかった。2年以上も帰国できていなかったのだから少しでも長く日本に滞在したいとは思っても、往復の移動に多くの時間を割かれてしまい、実際に滞在できる時間はいつもより3日程少なくなってしまう計算だ。
日本への渡航にあたって、チケットの購入以外にもするべきことは少なくない。入国前のPCR検査と、その陰性証明を含む各種書類の準備、そして求められるアプリのインストールなど。
厄介なのがPCR検査で、検査そのものは厄介でなくても、その際に発行してもらう陰性証明書は原則として日本の厚労省(外務省?)が指定するフォーマットでなければいけない点。パスポート番号の記入や医師のサインが必要になり、私がこれまでアメリカに行く度に受けて来たようなドラッグストアの無料検査ではそこまで対応してもらえないから、別途対応可能な検査機関を探さなければならない。住んでいるのが大使館や領事館がある町ならそのサイト上で幾らかの案内があっても、そうでない場所に住む者は自分で探す以外に方法は無く、これが面倒なこと極まりない。
幸いにも私の住むオンタリオ州ウィンザーにも、日本が指定するフォーマットに対応してくれるクリニックが見つかり、検査はそちらでお願いしようと考えている。費用は24時間以内に結果が分かるパッケージで150カナダドル(約1万5千円)だから、北米にある日本の各在外公館が紹介している場所と比べればかなり安い方なのではないか。
問題は、国側が事細かくルールを設定していたり、次から次へとそこに変更を加えていたりしても、その対策に則って帰国準備をする際に私達が情報源として頼りにする厚労省や外務省のサイトが、必要な情報を分かりやすくまとめてくれていないことにある。ただ大量の情報が羅列されているだけでひどく不親切だ。
今回私が一時帰国を計画するにあたっても、参考にさせてもらっているのは個人が運営するYouTubeチャンネルやブログサイトばかりで、国のサイトについてはそういったソースで得た情報の裏付けを取る意味合いで見るだけに過ぎない。例えば帰国時に利用した飛行機内に運悪く感染者が居たケースに於ける濃厚接触者の定義などは、搭乗者全員から前後2列に座っていた人へ、更には検査陽性者の家族及び同行者へと変更されていたものの、この点については国のサイトを見ていただけでは私も気がつかなかっただろう。
私自身は日本に住んでいる訳でもないし、血税により構築されているサイトだから云々、などと言うことはしたくないが、日本人と外国人が最新の情報を入手する上での「最後の砦」的存在でもあるのだから、ただ情報の継ぎ足しをするのではなく、もう少し誰が見ても分かりやすいような作りにしてくれないものかと期待する。
入国制限が緩和されたとは言え世の中は相変わらずこんな状況だから、せっかくの一時帰国を果たしたところで友人にあったりなどということは叶わないのかも知れない。私が感じている日本国内の雰囲気もあくまで文字を通じてのものであって、人々が実際にどこまで敏感になっているのかは感じ取れない。特に年配の方や、逆に幼い子供と同居しているような友人と会うのは不謹慎なのかもと思ったりしても、その判断は容易ではないし、自分から相手に直接聞こうにもやっぱりどこかばつが悪い。
帰国期間中に滞在するのは実家だし、そこにはいずれも七十を超えた両親が住んでいる訳で、当然ながらそんな年寄りを感染の危険に晒すようなことだって避けなければいけない。やはり今回ばかりは大人しく家でテレビでも観ている方がいいのだろうか。元より僅か10日程度の日本滞在だから、そんな風に過ごしていてもあっという間にまた離れる日を迎える。まあそれはそれでいいのではないか、いろいろな意味で、とも思う。
どうあれ久々の帰国だ。楽しみにしている。