「ひとりごと」

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日本に帰りたいと思う頃

海外に暮らして27年にもなるが、有り難いことにまた無事に新年を迎えることができた。

この間日本に帰って正月を過ごせた回数が恐らく片手でも数えられる程度なのは、新暦よりも旧暦の正月を重んじる国で長く生活していたせいだ。そのような国では当然のように12月31日まで仕事をし、年が明けても1月2日からまた平常通りの日々が戻って来る。だからどれだけ日本に帰りたいと思ってもそれを叶えるのは難しかった。

そんなことをかつて日本に暮らした時間よりも長く住んだ国で繰り返したせいなのか、今こうしてカナダに移住して来ても、毎度正月を迎える度に日本を恋しく思いながらも、その機を狙って帰国しようと前もって準備することは忘れてしまいがちになる。そう言えば年末年始を日本で過ごしたいなと思った頃には時既に遅しで、飛行機のチケットはとうに完売しているか、残っていても高額なものしか残されていない。今回もまた同様だった。

ただでさえコロナとウクライナでの戦争を煽りを受けて高騰したままの航空券価格。日本・欧米間では燃油サーチャージだけで10万にもなると言うのだから、以前の倍近い額を支払わなければ帰国できないのも仕方あるまい。そのような状況でもできる限り安さを実現し、かつ帰国するのにちょうどいい時期でと考えると、春の桜の季節のコストパフォーマンスがベストだと感じている。

歳を重ねるというのはつくづく不思議なもので、子供の頃には何とも思わなかった桜なのに、今では正月以外で最も日本に帰りたくなるのがその桜の花が咲く頃。いやいや連れて行かれ、大人達が酒盛りをしているのに付き合わされるのが退屈で仕方無かったはずが、今では自分が全く同じことをしたがるようになってしまった。

残念ながら、このコロナ禍が続く限りは桜の木の下で酒盛りなんてことはできそうにもないが、少なくとも桜そのものが珍しいばかりに桜の咲くところには間違い無く人だかりができるカナダとは違い、日本であれば暖かい春の日に一人静かに桜を眺めながら散歩できる場所がいくらでもあるのはうれしい。

正月を逃して桜まで逃しては堪らない。思いたったが吉日とばかりに、年明け前のある日に私は日本への往復航空券を購入した。デトロイトからニューヨーク、フランクフルト、シンガポール、そしてバンコクを経由して成田に向かう。帰りは羽田からシンガポール、フランクフルト、ニューヨークと乗り継いでデトロイトまで。

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様々な条件にプラスして、バンコクでやりたいことがあった為にこのようなルートでの帰国となったのだが、まあひどい物好きでもなければ普通はこんなに遠回りして日本に飛んだりしないだろう。まだ3ヶ月も先のことなのに、私だって今から既に憂鬱になっているのは言うまでもない。

それでもそんな苦労の先には桜が待ってくれているのだと思えば、年齢的にもまだ体力はギリギリもってしまうから、帰国翌日と翌々日の計画だってもう立ててしまった。飛行機の中でしっかりと休みをとり、メラトニンさえ忘れずに持って行けばどうにかなるだろう。いつの日か無理がきかなくなってしまう前に、ちょっと頑張ってしまおうと思う。