ウィンザー日誌

オススメのダシガラ

歩道を我が物顔で走り抜けるウィンザーの自転車乗り達

私が住むのはウィンザー(カナダ・オンタリオ州)でも賑やかなエリアだから、普段我が家の犬を連れて散歩している時にも気に留めなくてはいけない要素が少なくない。

どこぞの誰かが叩き割ったガラス瓶の破片に、買い食いしながら落としてそのままにされたアイスクリーム。平気で停止線を越えて横断歩道を半分占拠する車と、そんな車に轢かれて地べたに這いつくばっている「リスの開き」。他の犬のフンだってオブジェと呼ぶには多過ぎるぐらいあちこちに転がっている。そうそう、虚ろな目つきとおぼつかない足取りで近隣を徘徊する薬物中毒者にも注意が必要だ。つまり・・・、

よく(?)言ってもカオス。悪く言うなら無法地帯。

そんな中でも特に気になるのが歩道を我が物顔で走り抜ける自転車の存在。

日本でも最近は危ない自転車の乗り方をする人が目立つようになった気がするが、ここウィンザーでも同じような光景を目にしたり、自分自身が歩道を歩いている時にも遭遇することが結構ある。

すぐ隣りには自転車専用レーンがあるのに一体どうしてなのかと、そんな彼等の行動に私は当然ながら腑に落ちないものを感じずにいられず、時には怒りに任せてそのまま蹴り倒してやりたくなるほどだ。

実際のところ、自転車が私や私の犬に直接突っ込んでも来ない限りは相手を蹴り倒すなどできない。彼等だって事前にスピードを緩めるなり、無遠慮な急ブレーキをかけるなりして接触を避けるようにはしているし、それよりも先に私達が歩道の端に寄って自転車が通り過ぎるのを待つようにしている。

ただ昨日もやはり危ない自転車乗りに出くわして、その時私はふと思った。

「そもそもウィンザーでは自転車が歩道上を通行するのは許されているのか?」

どうしてそんなことを考えたのかと言うと、日本と違ってここには「自転車歩行者道(歩行者と自転車が共用する歩道)」のような標識など無いから。何かしらの決まりがあるのかどうかすら私もこれまで全く知らなかった。

気になったのなら調べてみよう。そう思いたった私は早速ネット上で関連する情報を探してみることに。

するとウィンザー市の条例と、数年前に掲載された興味深い記事を見つけることができた。

ウィンザー市の条例に交通ルールについて定めたもの(A by-law to regulate traffic within the limits of the City of Windsor)があり、その中に以下のような一文が記されている。

“No person shall ride a bicycle with wheel or wheels more than sixty centimetres (60cm) in diameter, a Power Assisted Bicycle (e-bike), or an electric kick-scooter (e-scooter) upon a sidewalk”

このように、直径60センチを超えるタイヤを有する自転車、そして電動アシスト自転車と電動キックボードで歩道を走ってはいけないと明記している(電動アシスト自転車は2012年10月、電動キックボードについては2020年5月にそれぞれ追加)。

そして2017年7月には、あろうことか当時の市議会議員が自転車の歩道通行を擁護する内容をツイッター上に書いたことで物議を醸し出す、なんてことがあったらしい。

このツイートでの意見に対しては、ウィンザーにあるサイクリストのアドボカシー団体で代表を務める人物ですら反対を表明し、そのような行為は条例違反であるだけでなく、何よりも危険であると強調していた。

団体代表とは言え一介の市民。そんな相手に条例を根拠に反論される市議会議員。この痛快なやり取りを私もタイムリーで見てみたかった。ちなみにこの議員さん、翌年に実施された選挙で見事に敗れ、一期で議会から去ることになったそうな。

条例だってあり、更にはそんな話題を提供してくれた元議員(と元議員に反論した団体代表)だって居たのに、ウィンザーには今日に至るまで歩道を走る不届者ライダーがはびこっている。

だから当分はこの状況にも改善は見られないのだろうし、今後も自分が気をつけるだけ。ただ、かの元議員さんのような面白い人の出現にはまだ期待している。