ウィンザー日誌

オススメのダシガラ

マリファナのニオイが漂うカナダの街角から

もうすっかり慣れてしまったようでも、何故かここ数日頻繁に出くわすものだからやっぱり気になるのがマリファナの匂い。嗅いだことの無い人はそれがどんな匂いなのか想像もつかないのだろうとは思うが、初めてカナダにやって来て、何か鼻をつく変な匂いに気がついたらきっとそれだ。

いつからだったか、もうカナダ全土で合法化されているから、医療用のものはもちろんのこと、嗜好用にもあちこちで売られていて、我が家から道を挟んで斜め向かいにも一軒マリファナ専門店があったりする。私の勝手な想像によれば、マリファナ専門店などと聞いてしまうとほぼ反射的に「カナダってヤバい」と感じる人は恐らく少なくない。

しかし毎回散歩に連れ出すたび、我が家の長女(犬)は猛烈にリードを引っ張ってかの専門店に行こうとする。入口にたどり着くと、今度はまたブンブンと尻尾を振り、ついでにありったけの笑顔を振りまいて店の中を覗く。マリファナを売るお店が他と違うのは客の身分証明書をチェックするスタッフが入口に居ることで、どういう訳なのか、ここのお店のスタッフさんに限ってはいつも犬のおやつを懐に忍ばせている。

「ヤバい」ものを扱う「売人」が、わざわざそこを通りかかる犬の為におやつを持って仕事に来て、仕事中とは思えない程のだらしない顔で犬と戯れ、気が済んだらまた「素敵な1日を!」なんて言って私の心まで明るくさせてくれる。これじゃあウィンウィンどころかウィンウィンウィンだ。全然ヤバくないだけでなく、何ともやたらと健全なのである。

そんな散歩の最中には、家の玄関前に立ってマリファナをくゆらしているような人にもよく遭遇する。犬の姿さえ目に入れば大抵の人はフレンドリーさを体全体で表現するし、それこそ諸肌を脱いで、見事な刺青を全開にしているような人であっても、片手にはまだ煙が立った状態のマリファナをキープし、もう片方の手で犬をわしゃわしゃする。そして満足すると、彼等もやはり一様に「素敵な1日を!」で私達を送り出すのだ。

そのような場面を「いかにも海外っぽい!」と、新鮮さに興奮を隠せない人も居るかも知れない。刺青のくだりだけであれば「海外っぽい」でも確かに間違いではないのだろうが、そこにマリファナの煙と匂いという要素がプラスされて来て、それが日常的風景であるというのは、実際にはここカナダ(とその他数ヶ国)ぐらいなのではないだろうか。

それでも、だ。たまにドッグパークで、犬を自由に遊ばせ、自分達はベンチに座ってマリファナを吸っているような飼い主が居るのにいい気分はしない。私自身も喫煙者ではあるが、さすがにドッグパークでタバコを吸おうとは思わない。

日本のように厳しく制限されていなくとも、歩きタバコをするような人をほぼ見かけなくなっているこの地で(モントリオールを除く)、人の為の公園であろうと、犬の為の公園であろうと、タバコやマリファナを吸うなど全く言語道断。普段さほど気に留めないはずのマリファナの匂いが、ここ数日やたらと気になってしまうのもそんな飼い主のせいだ。

彼等だってただベンチに座っておしゃべりを楽しんでいるだけなのだが、そこが公園であり、漂って来るのがマリファナの匂いであるせいで、まるで不良がたむろっているかのような印象を与えがち。そういう周囲をまるで気に掛けない態度は、人に対してのみならず犬に対しても同じだから、彼等の犬がトイレを済ませてもそれに気づくはずも(気づくつもりも?)無く、私が代わりに拾わなければならないことすらあるぐらいだ。

もちろん犬達に悪気は無いし、元々何の悪さもしていない訳で、いつでもきれいな環境で心置きなく遊んでもらえるよう、私がその後始末をするのにやぶさかではない。ただ、その飼い主には勘弁して欲しいと思うのが正直なところ。

こんなカナダの日常ではあるが、だからと言って自由にマリファナを使用してもいいと言うことにはならない。日本の大麻取締法では、大麻、つまりマリファナの所持、譲渡、購入は違法とされ、海外に於いて行われた場合であっても処罰の対象になり得るらしい。

まあ、近い将来に日本国籍を喪失するはずの私にはそれも関係の無いこととは言え、あの匂いを嗅いでしまうと、マリファナと今以上に近しい関係になりたいとも思わないのが事実だ。