手紙を書く人など、もうその存亡を誰も気にしない「絶滅危惧種」になった感があるご時世で、私は自身をまだギリギリその中の一人であると思っている。
多くの人は今やメールすら仕事の場面以外ではほぼ書かず、LINEのメッセージでのやり取りが基本になっているのかとは思うが、日本とは時差がある場所で暮らしていると、送信したその瞬間に相手の携帯を鳴らしてしまうのを嫌って普段あまり使うことは無い。そんな私にとって、手紙はいまだに重要なコミュニケーションツールの一つだ。
まだ私が海外で生活を始めた当時なら、スマートフォンどころか、ノートパソコンやインターネットすらまだ普及していなかったから、手紙はほぼ唯一の連絡手段であって、これと言って仰々しいものではなかった。ところが時代は流れ、改めて便箋を用意して来て手紙を書こうものなら、書く方はよくても、受け取った人は対応に困るのではないかと心配しなくてはいけなくなった現在。
そんな2022年でも、カードならまだそのデザインなども楽しめるから、感情を過度に載せ過ぎず、内容を控えめに書いておきさえすれば、相手も「かわいいカードが届いたよ」で済ませることができて丁度いいのではないだろうか。
カードを書いて出すのはたまのイベントに過ぎなくても、ウィンザーという国境地帯に位置する町に住んでいるからならではの利点は、カナダからでもアメリカからでも出せるということ。
去年亡くなったクリストファー・プラマー(映画『サウンド・オブ・ミュージック』でトラップ大佐を演じたトロント出身のカナダ人俳優)の記念切手のように、カナダで購入したお気に入りの切手を使いたければウィンザーから直接出せばいい。ただ、私はほぼ毎週末に対岸に買い出しに出かけているのもあり、大抵の場合で、封筒に書かれた差出人(つまり私)の住所はカナダ、貼られた切手はアメリカのものといった具合だ。
人口規模で遥かにカナダを上回るお隣りアメリカは、その分需要もあるからなのだろうか、郵便料金がこちらと比較してかなり安く、カード1枚を海外向けに航空郵便で出しても1.3米ドル(=176円)で済んでしまう(2022年11月更新:現在は1.4米ドル)。カナダからだと2.71カナダドルで、現行のレートで換算すれば2.11米ドル(=286円)になる。
それにカナダから何かを送る時、「ちゃんと届けばいいな」と、私はいつだって心の中で祈らずにいられない。高い料金を払っているにもかかわらず。アメリカ在住者があちらの郵便事情を嘆くのを聞いたこともあるにはあるのだが、どう考えてもカナダの方がより嘆かわしいものに感じるのだ。
似たもの同士のように思われがちなカナダとアメリカでも、この地に住んでいるからこそ感じられる違いもあり、そのいいとこ取りをしながら暮らせるウィンザーでの生活には、これまでに経験したことの無い面白みがある。
そろそろ使い切ってしまいそうなカードも、また次回デトロイトに出かけた時に買い足して来ようか。